問題点の1つ目は、「『お手頃価格しょうゆ』は醸造の期間が違う」ことです。
「本醸造方式」では原材料から「もろみ」を作り、これを攪拌しながら発酵・熟成をさせることで、「しょうゆ」ができあがると述べました。
これも前回述べたことですが、麹から生まれた酵素が働くことで、大豆や小麦のたんぱく質をアミノ酸に、でんぷんを糖分に、脂質を風味に変えるのです。
「本醸造」といっても2種類ある
ところがこれとは別に、「速醸」という方法があります。発酵のときに酵素を加え、もろみを加温しながら攪拌する方法です。
この方法だと、短期間でしょうゆが完成します。この場合、添加した酵素は加熱したときに働きが失活するので、表示は不要です。
つまり、「本醸造」といっても、昔ながらの自然の気温の中で長い時間をかけて醸造する「伝統的な醸造」(自然醸造)と「速醸」の2種類があるのです。ちなみに速醸は「温醸」とも呼ばれます。
もちろん速醸方式のほうが安く大量に作ることができます。
スーパーなどで「お手頃価格」で買える「丸大豆本醸造しょうゆ」は、この「速醸方式」で作られているものが多いです。
「伝統的な長期熟成しょうゆ」は、時間をかけてゆっくり発酵・熟成するなかで、酵素や乳酸菌がさまざまな生理活性物質を生み出します。これがしょうゆの複雑で深いうま味や風味、コクを作り出しているわけです。
また、食品に味をつけるだけでなく、生臭さを消す消臭効果など、さまざまな効果ももたらしてくれるわけです。
ところが、短期間で作られる「速醸方式」では、「天然醸造」のような麹菌の作り出す複雑な風味やコクが少なくなってしまいます。
もちろん「速醸」で作ったあっさりしたしょうゆが好みという人もいるでしょう。しかし、私は「昔ながらのしっかりしたしょうゆ」が好きだし、「力のあるしょうゆ」でなければ、和食は成り立たないと思っています。
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