新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか 失敗しないための採用・面接・育成 樋口弘和著
第4章「間違いだらけの日本の採用」では採用ノウハウが語られている。著者は適性試験のデータを新卒の面接選考に必須のデータだと考えている。適性試験はほとんどの企業が実施していると思うが、多くの採用担当者は参考資料に位置づけていると思う。しかし著者は「面接のサポートデータとしてほぼ80%以上の適切な情報を提供してくれる」と述べている。「適性試験は、会社に入ったらどういうタイプの人間になるかを非常にシンプルに判断」してくれる。「緻密」「創造性」というタイプを判断し、勉強の出来不出来とはあまり関係しない。
適性試験の役割について著者はもうひとつ重要な指摘を行っている。それは新卒採用だけ適性試験をするのでは不十分ということだ。
採用は社内の評価制度の延長であり、評価の高い(優秀な)人材を選ぶことだ。社員に対する適性試験を行っていれば、社内優秀人材タイプと応募者のデータを付き合わせることができる。これは正論だと思う。もっとも社員に対する適性試験を行っている企業はたぶん少ないだろう。
面接の定番質問を著者は全否定している。「学生時代にいちばん頑張ったこと」を聞くのは時間のムダ。なぜなら学生がストーリーを準備している質問だから。
面接で評価するのは、学生の毎日の具体的な行動や習慣。そこから学生の資質と器が見えてくる。具体的には講義への取り組みや、開始時刻のどれくらい前にゼミ室に行くか、どんな準備をし、どこまで議論するのか? そういう行動や習慣から資質が見えてくるのだ。だから「あなたの強みや課題などを含めて、自己PRをしてください」も無意味。話題の選定を相手に委ねてはいけないと言う。
このような定番化したお見合い面接が、失敗採用の原因と著者は考えている。面接は真剣勝負であるべきだ。笑顔も面接中は不要。書類に目を落とすこともダメと言う。
またグループ面接にも著者は反対する。グループ面接では学生たちは、つくられた集団で不自然なリーダーシップやチームワークを演出させられる。
選考面接はその学生の「自然な状態」で行うものであり、不自然なグループ面接は選考に不向きだという意見は、そう言われてみればもっともな正論だろう。
さて、ではどうすれば優秀人材が見抜けるというのだろうか?