新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか 失敗しないための採用・面接・育成 樋口弘和著
不思議なことがある。どの企業でも採用と育成を行っており、たくさんの経験が蓄積されているはずだ。ところが系統だった方法論がない。経験は、採用担当者や教育担当者一人ひとりの内部にしまい込まれ、日の目を見ない。個人的な信念を持つ担当者はいるだろうが、その信念が合理的なものなのかどうかも検証されない。
「第一印象で9割はわかる」「3分で人物は判断できる」と言う採用担当者もいる。本当にそれでいいのか? これも検証されたことがない。
そんな日本の「方法論なき人事」に一石を投じるのが本書である。採用・面接・育成に関して具体的な方法を語り、とても有益だ。人事関係者が学び活用できる一書である。『新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか』というタイトルは挑発的だが、読み終えてみると、「期待はずれ」なのは人事だとわかる。
本書は第1章「上司の成功体験が通用しない時代がやってきた」で、まず変化について語る。若者の質の低下を指摘されることが多いが、見落とされがちな変化がある。働く意義や価値観について真剣に考える若者が増えているのだ。
樋口氏によれば「就活のハウツーではなく、本気でそう考えている若者」だ。「多くの学生が、その会社が自分たちの成長にとって合っているのかどうかを本音で確認しようとしている」のだ。そういう強い想いを持って入社した若者を、OJTという名の“放置プレー”でのんびり育てようとすれば、若者たちが怒り出すのは当たり前。
放置文化=OJT文化=ほったらかし文化をやめ、構ってあげる文化にすることから若者の育成は始まる、と著者は説く。
第2章「こんなはずではなかった!?−採用ミスの真相」では、採用してはいけないダメ人材を10類型で解説している。「草食獣」「受験勉強のスペシャリスト」「海外留学経験者」「2浪・2留」「マイペース学生」「家庭教師・塾講師経験者」「情報メタボ学生」「マニュアルを鵜呑みにしたハウツー君」「さわやかなルックス」「自己実現にこだわりすぎる学生」という10タイプである。
学力にかかわる部分が面白いと思った。「受験勉強だけのスペシャリスト」とは、一流大学の学生を指している。ブランド大学からの応募があると採用担当者は喜びがちだが、受験勉強によってぎりぎりで合格した学生は当然成績も良くない。一流大学の成績下位学生は自立性や社会性が欠如している傾向が強いと著者は言う。