新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか 失敗しないための採用・面接・育成 樋口弘和著
2浪、2留以上の採用もリスキーだと著者は言う。こういう人はプライドが高く決断力がないと断じている。こういう主張は過激に聞こえ批判されやすいが、著者は経験から導き出された法則を述べているのだと思う。
第3章「一流の人材はどこにいるのか?」では「人材は企業による教育でどの程度伸ばせるか」という問いを発し、続く文で「私の経験では、採用段階(つまりその人の持っている資質)で8~9割が決まる」と述べている。
この文は誤解を招くかもしれないが、著者が言う「資質」とは素直さと向上心だ。頭が良くてもプライドが高く素直でない人は伸びない。素直な人は、人の話をよく聞き、過去の成功にもすがらない。いつも謙虚だ。
向上心も重要だ。本物の向上心のある人は、過去から目標につながる生き方をしており、過去、現在と将来が連続している。そして著者は、向上心という資質や志向は、会社で教育できるものではないと述べている。
素直で向上心のある一流人材はどこにいるのか? 偏差値の高い大学だからといって全員が優秀というわけではない。それほど偏差値が高くない大学であってもその大学のトップ20%に入っている学生は一流人材であることが多いそうだ。
ここから重要な採用戦略が導き出される。「どのレベルの大学であればトップ層が採れるか」である。企業の器に合ったレベルの大学からトップクラスを採用するのだ。また社風とマッチする大学に絞ることも大事な選択だと著者は述べている。
採用と教育といった人材部門の仕事が、企業にとって「重要な投資活動」になってきた、とも書かれているが、これは重要な指摘である。現状は、採用担当と教育担当は異なる人間が担当し、人材要件があいまいなままに採用し、配属することが多い。
「求める人材像」を社長や人事部長が述べている企業は多いが、ほとんどが作文のレベルにとどまっている。科学的に定義してその資質の強弱までデータで示し、採用担当者全員が共有する必要がある。
体制も変えるべきだ。著者の提案は、採用と教育という縦割り組織をやめて、採用・教育チームを複数作ることだ。採用とその後の1年間のフォローを同一チームが担当する。次の年の採用は第2チームが担当し、フォローを行う。確かにこういう体制にすれば分離されていた採用と教育が統合されるだろう。