「脂の乗った100円サンマ」が戻らない根本的原因 不漁のままなのに「豊漁」と錯覚してしまうワケ

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外国船が洋上で凍結するのに対して、日本の漁船は漁港まで鮮魚で持ち帰ります。しかもその距離は片道1000km以上、3日程度。日本の漁船が往復と水揚げで、1週間程度も費やす一方で、外国漁船は帰港することなく洋上で操業を続けます。これでは、物理的に獲り負けてしまうのも当然です。

資源量が多ければ漁場が広範囲に広がるため、漁獲圧は緩和されます。しかしながら資源が少なければ、漁場は狭くなり、漁船は狭い漁場でひしめき合って獲り合います。これが、サンマ漁の実態で、資源が回復するはずはありません。

ここで先の図にある右のデータを見てください。北海道と三陸沖に暖水塊(周囲より温度の高い海水の塊)があってサンマの回遊を妨げているというものです。しかしながら、そもそも漁場はこの暖水塊からはるか彼方の公海上です。

報道などで日本に回遊する前に外国漁船が漁獲してしまうといわれることもあります。しかしすでに公海上の資源も激減し、遠くに行けばたくさん獲れるということではないのです。

科学的根拠に基づく漁獲可能量の設定はマスト

上のグラフは、サンマのTAC(漁獲可能量)と漁獲量の推移です。漁獲枠が減少していますが、それ以上に漁獲量が減少しています。このTACと漁獲量の相関関係は、資源管理が機能している国々の魚種ではありえません。アメリカのスケトウダラや、ノルウェーサバなど、TACというのは、実際に漁獲できる数量よりもはるかに少なく設定されているのが、資源管理が機能している世界の常識です。

サンマのTACを減らして資源管理強化で国際合意して来ているといった類の報道があります。しかし減らしたTAC自体が依然大きすぎるので、削減効果は残念ながら「ない」のです。科学的根拠に基づいた国別のTACを設定しなければ、資源崩壊は避けられません。

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