「脂の乗った100円サンマ」が戻らない根本的原因 不漁のままなのに「豊漁」と錯覚してしまうワケ
資源管理を機能させるために不可欠なのは、いまだに決まっていない科学的根拠に基づく国別のTACの設定です。漁獲枠を国別に配分することは、将来にわたる国益が絡みます。このため合意は極めて難しいのです。さらに過去ではなく最近の漁獲実績を基にした話し合いになる可能性が高く、シェアが大きく減ったことは負の遺産となってしまいます。
2000年以前は約8割を占めていた日本の漁獲シェアが、2022年になると2割を切ってしまいました。
台湾や中国が漁獲実績を増やしてしまう前に、国別TACの設定交渉を始めるべきでしたが「時すでに遅し」です。これらの国々は、サンマの漁獲のために漁船も配備・建造しており、容易に引き下がるはずがありません。
日本では一般的に、資源量を大きく左右する漁業の影響や、中長期のデータをあまり考慮せずに資源動向を評価する傾向があるようです。そうすると、漁獲量の減少が海水温上昇などの環境要因に責任転嫁されてしまい、現実離れした分析結果となってしまいます。
サンマの資源管理が機能していない
また、国連食糧農業機関(FAO)の「責任ある漁業のための行動規範」にある予防的アプローチはあまり考慮されていないとみられます。このためか、まるで「埋蔵金」があるかのような資源評価や、資源管理が機能している北欧では考えられない大きな漁獲枠が設定されてしまっています。
日本の資源管理の方法や獲り切れないTACの設定などは、北欧の漁業関係者をはじめとする人々に「絶対に陥ってはならないケース」として映っています。
サンマが獲れなくなっている最大の原因は、科学的根拠に基づく国別TACがないために、資源管理が機能していないからです。国は漁業法改正で、2020年12月より、数量管理に基づく資源管理に舵を切りました。
いま必要なのは最低限、サンマが減っている本当の原因を理解することです。そして将来のために、禁漁も含めた大幅な漁獲制限が必要になっている現実に気づくべきではないでしょうか。サンマ資源が枯渇してしまえば、日本漁船や外国漁船もなく「おしまい」です。そして消費者も含め多くの人が困ることになります。
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