就任時から決まっていた「名ばかり議長」の運命 カオスなアメリカ政治、再び「政府閉鎖」の危機

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保守強硬派が共和党政治で影響力を拡大している理由は主に2点ある。

まずは下院の恣意的な選挙区割り(ゲリマンダリング)により、右寄り、あるいは左寄りに偏った選挙区が増えていることがある。

クックポリティカルレポートによると、下院は全国で435選挙区あるうち、激戦選挙区は1999年に164選挙区あったのが、2023年には82選挙区と半減している。したがって、ほとんどの下院議員は本選よりも予備選で勝負が決まる。共和党の候補者の場合、より保守色を強く出して予備選で選ばれることが重要ということになる。民主党にとっても事情は同じだが、現時点では、共和党は極端な傾向に拍車がかかっている。

また、今日、ケーブルテレビ番組への出演やソーシャルメディアなどを通じ、選挙資金を自ら確保することが容易なことも挙げられる。

議員は党指導部に頼らなくてもよいため、指導部の影響力は低下。バイデン政権の批判だけでなく、共和党指導部を攻撃することが党内の反エスタブリッシュメント支持者に効果があり、注目も高まることで選挙資金も集まる。

11月にも政府閉鎖危機が再燃

次期下院議長の有力候補は初代フリーダムコーカス(自由議員連盟)会長で下院司法委員長のジム・ジョーダン議員と、下院共和党ナンバー2のスティーブ・スカリス院内総務。マッカーシー氏と比べ、スカリス氏は右寄り。そのさらに右がジョーダン氏だ。

トランプ氏も出馬の意欲を示唆した。だが、下院の規則変更(現規則では2年以上の禁固刑が適用される可能性がある重罪について起訴された人物は議長に就けない)が必要なことや無記名投票であることから当選できない可能性もあり、後日、トランプ氏はジョーダン議員を支持することを表明している。

民主党が握る上院とホワイトハウスを納得させるには、下院で超党派の法案を可決しなければならないことが想定される。しかし、マッカーシー氏よりも右寄りの次期議長が、最初から超党派法案を推進するかは大いに疑問だ。11月あるいは来年、政府閉鎖が起こる確率が再び高まっている。

ジョーダン氏、またはスカリス氏との交渉はますます厳しさを増すため、譲歩が期待できたマッカーシー氏の解任に手を貸したことを民主党は後悔するかもしれない。

なお、マッカーシー氏は10月9日、イスラエル情勢について記者会見を開いた際、それまでの態度を一変し、議長職への復帰に意欲を示した。だが、今や同氏は議長解任を支持した下院共和党議員8人と民主党議員から信頼を失っているため、復帰の可能性は低い。

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