就任時から決まっていた「名ばかり議長」の運命 カオスなアメリカ政治、再び「政府閉鎖」の危機
仮に政府閉鎖に突入すれば、ムーディーズをはじめ格付機関各社がアメリカ国債の格下げに踏み切ることが懸念されている。格下げにより、金利上昇に加え株式市場の下落も予想され、足元では堅調に推移しているアメリカ経済にもダメージを与えることが予想される。
「民主党支持者は(候補者に)恋に落ち、共和党支持者は共同歩調をとる(Democrats fall in love, Republicans fall in line)」――、長年、アメリカ政治では特に大統領選でこのように各党支持者の特徴が語られてきた。
だが、今日のアメリカ政治は逆転している。共和党は共同歩調を取れず内紛が顕著。一方、民主党は内部分裂がないとはいえないが、党指導部がまだ主導権を握っている。
特に第117議会(2021年1月~2023年1月)で民主党は現議会と同じ議席数にて僅差で多数派を下院で握っていたが、ペロシ議長(当時)の手腕もあり、党内の分裂を防いでいた。
「議長解任」の新ツールは乱用される
民主党が党内である程度、団結できている背景には、穏健派のバイデン大統領が左にシフトしていることに加え、トランプ前大統領の存在もあろう。民主党の「共通の敵」として、いまだにトランプ氏の存在が大きいことが党内団結をもたらしていると思われる。いずれトランプ氏が政治から去った場合、団結が維持されるか注目だ。
議会では民主党と共和党で引き続き拮抗している。一方、社会の二極化が進む今日、いずれの政党も、勢いに乗る党内の極右あるいは極左のグループによる指導部への強い圧力が見られる。
以前は「大統領弾劾」といった奥の手を議会で審議することがなかったのが、近年では増えている。今回、「議長解任」といった指導部を脅迫する新たなツールも前例が作られたことで、今後、一部議員が乱用すること必至だ。
カオスと化すアメリカ政治、これがワシントンの「ニューノーマル」かもしれない。
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