「読みづらい名前の泡沫候補」――当初、アメリカの有権者はビベック・ラマスワミ氏に対し、こうした印象を持ったのではないか。
しかし、バイオ製薬会社ロイバント・サイエンシズの創業者で前最高経営責任者(CEO)、総資産9.5億ドル(約1390億円)の大富豪であるラマスワミ氏は、共和党の大統領候補指名獲得レースで支持率3位に浮上。台風の目となりつつある。
ラマスワミ氏はオハイオ州シンシナティで生まれ、インド系移民でエンジニアの父と高齢者専門の精神科医の母を持つ。両親に「人目を引きたいのなら、傑出する人物になれ」と教えられた通り勉学に励み、ハーバード大学を卒業後、イエール大学法科大学で学んだ。
在学中からベンチャー企業のネットワークを構築するなどビジネスを展開し、ヘッジファンドなどでの勤務を経て、2014年にバイオ製薬会社ロイバント・サイエンシズを立ち上げた。今年2月、アメリカ大統領選出馬に合わせ、同社の会長を退いている。
リバタリアンからゴリゴリの保守派に
ラマスワミ氏が2月に行った出馬表明で「単なる政治運動ではなく、次世代のアメリカ人のための新しい夢を創造する文化運動だ」と訴えたように、既存の政治勢力や社会的理念に挑戦状を叩きつけたも同然だ。
もともと、ラマスワミ氏はリバタリアン(政府の内政干渉を最小限にとどめ、個人の権利や責任を重視する自由主義者)で、2004年の大統領選では共和党のブッシュ大統領(当時)にも、民主党のケリー候補にも投票せず、リバタリアン党に投票していた。理由として「20代だった当時、どちらの党にも嫌気がさしていた」ためと説明する。
リベラル寄りの曲に共感し、ハーバード大学時代は“Da Vek”と称して白人ラッパー、エミネムの代表曲「ルーズ・ユアセルフ」などをパフォームする一面も。最近でも、アイオワ州の集会で披露した。だが同氏がゴリゴリの保守派に転換したのは、2021年に出版した著書“WOKE, Inc.―アメリカ企業の社会正義詐欺の内幕”(邦訳未刊)で読み取れる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら