「日本的な通過儀礼」ジャニーズが他人事でない訳 日本社会の組織的特色「運命共同体」の大弊害

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それは、共同体の外部に対する敏感さが失われ、主要な関心のほとんどが内部に集中するようになる事態を指している。そうして「共同体構造は、天然現象のごとく不動のものにみえてくる。共同体における慣行、規範、前例などは意識的改正の対象とはみなされず、あたかも神聖なるもののごとく無批判の遵守が要求される」のである(同上)。

不祥事が次々と起こっても、内部にばかり目が向いているので、まず共同体が求める要請が絶対視され、いかに火の粉を振り払うかに献身することになるのだ。

ちなみに、機能集団とは、ある目的を追求するために結成・形成された集団・組織のことをいい、血縁や地縁によって自然的に成立する基礎集団とは別物とされている。

神聖なるもののごとく無批判の遵守が要求される

ジャニーズ事務所の問題に引き付けると、事務所創設時からささやかれていたジャニー喜多川氏による性加害から、所属タレント(元含む)の取り扱いに関するメディアコントロールに至るまで、「あたかも神聖なるもののごとく無批判の遵守が要求される」事柄であったといえる。

多くのマスメディアがこれまで「運命共同体」だった経緯も(撮影:東洋経済オンライン編集部)

これは事務所と利害関係にあったマスメディアも同様の面があり、もちろん相互依存的なところはあったにせよ、各マスメディアも「運命共同体」と化していたことが想像に難くない。つまり、有力な芸能事務所によるメディア支配とその恩恵が「天然現象のごとく不動のもの」として各マスメディアは受け入れ、誰も「意識的改正の対象」とはみなされなかったのである。

私たちは大なり小なり似たような事例を身近なところで見聞きしているはずだ。たとえば、自動車保険の不正請求問題などで話題になったビッグモーターも、たまたま白日の下にさらされた一例に過ぎない。組織と名が付くものは、最悪の場合、その内部の構造が神聖不可侵とされる力学の中で、外部から見れば「異常」としか言いようのない態度を貫くおそれがある。

理由は明快で、最終的に国が定めた法律や法執行機関などよりも「内部のルール」が優越するからだ。その優越の具体例のバリエーションに数えることができ、しかも共同体のメンバーを強力に結び付ける”接着剤”の役割を果たしているのが「通過儀礼」と呼ばれるものだ。

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