マンションで静かに進む「ステルス値上げ」の現実 人手不足の建築業界に迫る「2024年問題」とは?

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委託契約内容の詳細を決定しないまま、管理会社への要求だけが高まる結果になってしまっては、フロント担当者のモチベーションも低下してしまうだろう。

さらに、「要求ばかり多くて採算が合わない」と管理委託契約を更新しない結果となり、新たな管理会社を探すのに四苦八苦する可能性も出てくる。管理会社としっかりと話し合い、進めていくことも大切だ。

外部の専門家に管理を任せられるメリットは大きい

またマンション管理業務のさまざまな課題を解消するため、新たに「第三者管理」方式という形式が注目されている。

区分所有者(住民)が役員を担う理事会ではなく、外部の専門家、つまり第三者に管理組合の運営を任せるのが特徴で、しっかりとした専門家に管理を任せられる安心感が得られる。管理組合の運営を円滑に進められるメリットは大きいと言えるだろう。

しかし「第三者管理」方式を採用する場合も、「任せきり」は危険だ。「第三者管理」方式で管理会社に委託する場合、理事長(役員)の業務そのものを任せてしまうこととなる。

従来のやり方とは異なり、理事会と管理会社の意思の疎通が不要となるため、どうしても管理会社主導で活動が行われる傾向が出てくる。管理組合の監視の目が少なくなることで、一つひとつのマンションにかける熱量が薄くなってしまっては、「ステルス値上げ」と変わらない。

第三者管理を選択した場合でも、区分所有者の意見が反映されるよう注力しなくてはならない。理事会は廃止せず、自らのマンションである点を忘れずに、しっかりと監視・検証することが透明性のあるマンション管理となり、マンション保有に関するさまざまなコストの値上げに対する自衛策となると心得たい。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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