株価急騰のNECがライバル勢に「逆転」する条件 PBRはようやく1倍超え、なお遠い富士通の背中

✎ 1 ✎ 2
拡大
縮小

NECのPBR(株価純資産倍率)は近年、“解散価値”とされる1倍を割り込み、5月の株価上昇でようやく1の壁を超えた。それでも10月上旬時点の株価をベースとしたPBRは1.2倍と、2倍近い富士通やNTTデータにはまだ水をあけられている。

「(富士通などの競合他社との)ビジネスモデルの違いが株価のディスカウントを招いていた」。NECの森田隆之社長はそう認める。

“IT大手”の一角とされるNECだが、実際にはSI(システム・インテグレーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)支援などのITサービスのみならず、コンピュータや通信機器などハードウェアを製造する事業の割合が大きい。

ハードウェア製造は海外勢などとの競争も激しく、利益率を押し下げる要因となってきた。直近では、採算が悪かった海外向け小型無線通信機器や電気・電子機器受託などの製造事業を手放している。

NECは今2024年3月期から、セグメントを「ITサービス」、「社会インフラ」(通信キャリア向けの基地局設備や、防衛、宇宙関連などの事業が該当)、「その他」の3つに分けた。3兆3800億円を計画する今期売上高のうち、ITサービスの占める割合は53%にとどまる。

一方の富士通は、パソコンや電子部品などのハードウェア製造を手がけてはいるものの、それらは「ノンコア」と位置づけ、ITサービス関連の領域に経営資源を優先的に投入する姿勢が明確だ。

ITサービスの収益性は低くないが…

ITサービスに限ってみれば、NECの収益性は競合に大きく見劣りする水準ではない。

今期予想で比較すると、NECのITサービス事業の調整後営業利益率が9.8%なのに対し、富士通でいわゆるITサービスに相当する「サービスソリューション事業」の営業利益率は11.8%。ハードウェアの製造機能をほぼ持たないNTTデータグループの営業利益率は7.1%の計画だ。

NECの森田社長は「ITサービスの専業企業になればなるほど、(市場の)高い評価が得られている。そうした企業の売上高研究開発費比率は1~2%程度の場合が多いが、NECでは4%レベルの投資をしてきている。これにより、今までマーケットから敬遠されてきた」と分析する。

各社の有価証券報告書によると、2023年3月期の研究開発費比率は富士通が2.9%、NTTデータグループが0.7%。一方のNECは3.7%とひときわ高い。通信インフラやAI関連などの技術開発に積極投資していることが背景にある。

次ページIT専業企業に逆転できる?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT