中国不動産王の最期、許家印の「成り上がり」人生 「恒大帝国」の皇帝はなぜ破滅へ向かったのか?

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恒大の多角化戦略は進化を続け、2015年にはヘルスケア事業を手がける恒大健康が上場を果たした。同年、恒大は保険業界への本格参入を発表、生命保険大手の中新大東方人寿を買収し、社名を「恒大人寿」に変更した。

2016年、恒大はインターネット金融事業に参入し、「恒大金服」が正式にスタートした。

最盛期には、恒大集団は中国恒大、恒大健康、恒騰網絡、嘉凱城、恒大淘宝、恒大文化と国内外の上場企業6社を傘下に擁し、事業範囲は住宅、商業、観光、ホテル、サッカー、音楽、ミネラルウォーター、農産物、整形外科病院などの分野にまで及んだ。

ただ、恒大集団の中核事業は依然として不動産だった。その事業規模を拡大するため、許家印は金融機関に照準を合わせた。

2016年と2019年、恒大は増資を通じて盛京銀行(遼寧省に本拠を置く都市商業銀行)の支配株主となり、持ち株比率は36.4%に達した。ここ数年、盛京銀行は直接または間接的に中国恒大に「資金を注入」し、その資金規模は1000億元(約2兆円)以上に及んだとみられる。

同業者からすぐに冷笑を浴びた

2017年末、許家印はEV(電気自動車)をはじめとした新エネルギー車の事業に参入。2020年9月には恒大健康を「恒大汽車」へと社名変更した。

ただ技術、人材、経験が不足していたため、許家印は、「恒大の自動車製造は独自の道を見つける必要がある」と発言。「買買買、合合合、圈圈圈、大大大、好好好(資金で技術力を買う、他社と協力する、顧客を囲い込む、会社の規模を大きくする、ベストを目指すこと)」を提唱した。

これらの発言は、自動車業界の同業者からすぐに冷笑を浴びた。許家印の製造する車は金に物を言わせたものにすぎず、遅かれ早かれ痛い目に遭うだろうと見られていた。

許家印に近い関係者は、許家印が事業の規模拡大に固執しているのには、資金調達の目的があったと考えている。

許家印は恒大汽車の株価をとくに気にかけており、さまざまな機会を見つけては購入を勧めていた。この関係者は、「恒大汽車の株主も麻雀を打ちに来た(ギャンブル感覚で出資しに来た)だけではないだろうか」と語っている。

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