日本の防衛産業は鎖国から開国へシフトする キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<下>

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――これまで国内企業は国営企業的な体質が強かったが、変わらざるをえない?

国際的な視野に立って自分たちのバリュー、自社の強み、弱みを客観的に把握してほしい。日本の企業もそれをベースにしてビジネスに対する意識を変えていってほしい。防衛省にしがみついていればいいという姿勢ではなく、自ら変革を行わなければ地盤沈下をするだけだ。

国際共同開発ではそのような姿勢、交渉力が必要だ。日本企業は海外市場に足がかりをもっていない。このため独自に進出することは難しい。その意味でも他国とパートナーシップを組むことが必要だ。パートナーとして付き合うのか、下請けになるのかは利益が大きく異なってくる。

安倍政権の輸出姿勢は「大物狙い」の感が強い?(撮影:尾形文繁)

――現状、安倍政権ではインドへのUS-2、オーストラリアへの潜水艦の輸出など「大物」狙いの感が強いが、これらは政治的、外交的に多くの要素があり、輸出「初心者」である日本には荷が重いのではないか。むしろ初めは小さなプロジェクトや、コンポーネントなどの輸出に力を入れるべきではないか。

確かに大きなプロジェクトで合意するのは難しい。英国とはミーティア(長距離空対空ミサイル)の共同開発について話をしているが、次のステップに入るとき、どこの国がどの程度調達するのか、誰がどの程度出資するのか、英国だけではなく欧州の他国の参加、あるいは米国の参加はあるのかいろいろ調整する要素が出てくる。これがうまくいけばモデルケースになるだろう。

品質やサポートでは競争力がある

関連情報は「東京防衛航空宇宙時評」にも掲載されています(上のロゴをクリックすると同サイトにジャンプします)

――日本企業の強みとは?

一般論だが、日本企業のイメージは品質が高い、サポートがよいなどだろう。だがこれらはあくまで民生品のイメージだ。装備に関しては市場に出してみないとわからない。日本の装備は自衛隊しか使用しておらず、当然ながら実戦の経験がない。また日本の環境に適合するように作られている。はたしてそれが外国で有用かユーザーが決めることだ。ユーザーの要求に合わせることは日本企業の得意とするところだ。

――日本の短期、中長期的な脅威と、それに対する防衛省の装備要求とはどのようなものか。

周辺諸国の軍事動向について、たとえば中国を例に取れば、国産空母や、ステルス戦闘機などを開発中であると言われており、こうしたわが国周辺の状況を踏まえ、防衛大綱等においては、島嶼部に対する攻撃への対応などに取り組んでいくこととしている。このための機動展開能力の向上のためにオスプレイやAAV7などの導入を進めている。海自では潜水艦や護衛艦の増強などが進められている。空自はF-35Aの着実な整備、警戒監視能力の向上のためにE-2Dの導入などを行っている。

開発アイテムでは個別に具体的に申し上げる段階ではなく、次の大綱、次の中期防の話となる。現状は現在の大綱、中期防に沿って防衛力の整備を行っている。各幕僚監部、技本ではすでにニーズとシーズの研究をしているはずだ。技本はニーズ側からも要求がでて、それをマッチングさせて次期大綱、中期防に反映されていくと思う。装備庁は研究開発のマッピングをしたり、分野ごとの評価、研究開発のビジョンを示していくことになるだろう。それが企業側の投資の呼び水になれば幸いだ。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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