北陸新幹線延伸でJRが投入「新感覚バス」の意外性 福井観光の新たな「切り札」として期待集める
なぜ、XRバスなのか。一見、突飛なアイデアに思えたが、取材を進めるうちに、そこには「これしかない」という必然的な理由があることがわかってきた。
5月のG7広島サミットで先進7カ国の首脳が乗船したことで一躍注目を集めた瀬戸内海を運航する観光型高速クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」。この船の開発にJR西日本が関わったことはすでに知られている(2023年5月22日付記事「G7で大活躍、JR西『観光船シースピカ」』誕生の秘密」)。シースピカは2020年秋の「せとうち広島デスティネーションキャンペーン」に合わせて開発され、同年9月から運航を開始している。
「シースピカ」と同じ制度を活用
シースピカは広島市に本社を置く海運会社の瀬戸内海汽船グループとJR西日本のグループ会社が共同で設立した「瀬戸内島たびコーポレーション」が所有しているが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)の船舶共有建造制度を活用して、JRTTも共同建造者として参加。建造費用の一部(7~9割程度)をJRTTが低金利で貸し付けている。
JRTTは貸付割合に比例して船舶持分を保有するが、返済に応じて持分は減っていく。将来的には減価償却後の残存簿価で事業者がJRTT持分を買い取ることで事業者の100%保有となるという仕組みだ。事業者にとっては自己資金の調達に必要な担保さえあれば船舶を建造できるというメリットがある。船舶共有建造制度はもともと貨物船や離島航路を運航する船舶向けの制度だったが、シースピカは国内クルーズ船では初めてこの制度が適用された。
自己資金の大半はJR西日本グループが負担しているが、シースピカの建造費用全体から見ればわずかだ。また、その負担額にしても、広島までやってくる観光客の新幹線運賃・料金を勘案すればトータルで元は取れるとJR西日本は考えた。しかも、実際に運航するのは地元の瀬戸内海汽船のグループ会社であり、地元のノウハウを活用した共同事業ということになる。地域の観光振興につながるということで自治体の支援も得られやすい。地域との共生を目指すJR西日本にとってはベストともいえるビジネスモデルである。
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