北陸新幹線延伸でJRが投入「新感覚バス」の意外性 福井観光の新たな「切り札」として期待集める

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バスツアーの所要時間は約60分で、皇居、東京タワー、お台場など都内の観光名所をめぐりながら、窓に投影される映像の演出によって、東京の今と過去を行き来する「時間旅行」を楽しむことができる。内山課長はピンと来た。「このXR映像は福井で使えるのではないか」。

JR西日本地域まちづくり本部地域共生部 内山興課長
XRバスのプロジェクトを担当するJR西日本地域まちづくり本部地域共生部(地域ビジネス)の内山興課長(記者撮影)

最新技術のXRを使って恐竜時代や武士の時代を再現するというのは、有効な手段に違いない。さっそくKNT-CTホールディングスの担当者に連絡を取り、福井でもXRバスを走らせることが決まった。

JR西日本や地元の金融機関などの出資により設立した「福井RIDEコーポレーション」がXRの設備開発やコンテンツ制作を行う。コンテンツについては「TRICK」シリーズで有名な堤幸彦氏を総合演出に起用し、「時代を超えた体験を提供したい」と意気込む。バス運行は地元の京福バスが担当する。「地元のバスの安全運行のノウハウは我々が直接持っているわけではないので、乗務員も含めたオペレーションは地元の会社が頼りになる」。

地域に根差した最適解を

XRバスのアイデアはJR西日本のほかの地域でも使えそうだし、バスだけでなく、鉄道にも応用できるかもしれない。9月8日に東京都内で開かれた社長会見の席上で、長谷川一明社長は「XRバスを他県に展開することもありうる」と話した。

しかし、それは決してXRバスありきという意味ではない。XRバスはあくまで福井における地域共生ビジネスの最適解を追い求めた結果であり、ほかの地域にはその地域に根ざした解決策があると長谷川社長は考えている。まさに広島のシースピカが、福井ではXRバスになったように。

「○○ありき」ではなく、つねにその地域での最適解を考える。それは、赤字ローカル線問題への取り組みとも共通しているに違いない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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