アントニオ猪木を睨みつけた"逸材"が今語ること 新日本プロレス・棚橋弘至が語る"本物"の記憶

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――ちなみに、「猪木超え」というテーマを棚橋さん自身は持っていますか?

プロレスの世界に大きい山があったとして、そこにある道は全部、猪木さんが作ったルートなんです。獣道をかき分けて、反対側から登るしか猪木さんに追いつく方法はないのかな。僕がやっているのはその途中ですかね。

そもそも猪木さんのような、移民としてブラジルに渡って、力道山先生に拾われて、日本に戻ってプロレスラーになった……というダイナミズムは、現役レスラーには誰一人としてないんです。ほとんどが普通に義務教育を終えて、新日本の入門テストを受けてプロレスラーになるっていうね。猪木さんのようなドラマ性がないので、「猪木超え」はなかなか難しい。まぁでも、僕は猪木さんより長生きしようかなと思います。

猪木さんが設立した新日本プロレスで、棚橋さんはリングに立ち続ける(写真提供:新日本プロレス)

最後までメッセージやエネルギーを発信し続けた

――最後に猪木さんと会ったのはいつでしょう?

2020年ですかね。猪木さんが入院される前か一時退院されたときに、藤波辰爾さん、長州力さん、北沢幹之さん、藤原喜明さんなど往年のレスラーの方々とお会いされるときに僕も呼んでいただき、いろいろお話しさせてもらいました。そのときはもうだいぶ痩せられていましたね。

――晩年の猪木さんはYouTubeで、闘病中の姿も配信されていました。

本当は格好いい猪木さんだけでいいはずなんですけど、年を重ねて病気でボロボロになっていく格好悪いところも見せられるのは、人としての強さですね。恥をかけ、馬鹿になれと、メッセージやエネルギーを発信し続けたのだろうなと。

――2022年10月1日、猪木さんの訃報を聞いたときはどのような気持ちでしたか?

イギリス遠征に向かっている機内で知りました。おいおいおい、このタイミングかよ、と思いましたね(苦笑)。そのままイギリス大会に出場して、10カウントゴングをしたんですけど、現地のファンの方たちも立ち上がって、脱帽して黙禱してくれて。プロレスファンあったけえな、猪木さんすげえなって思いました。

――猪木さんを追った映画『アントニオ猪木をさがして』が公開されます。棚橋さんも出演されていますが、映画を通じて伝えたいことは?

アントニオ猪木っていうすごい人物がいたから、新日本プロレスの今があるということを、一人でも多くの人に伝えたいです。猪木さんという僕が大好きな、素晴らしい人を知って、共感してもらえればうれしいですね。あ、50年後には、「棚橋弘至をさがして」っていう映画ができると思います(笑)。

(後編記事に続く)

映画『アントニオ猪木をさがして』は2023年10月6日(金)公開 Ⓒ2023映画「アントニオ猪木をさがして」製作委員会 (写真:原 悦生)
本予告映像

 

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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