「電気のGTI」次世代フォルクスワーゲンの本気 ドイツIAAモビリティで聞いたGTIを続ける意味

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ID.GTIは、2027年に発売するという。メカニズム的には、GTIの”伝統”にしたがってモーターをフロントに搭載するようだ。

ID.シリーズの基本は、リアモーターの後輪駆動なのだが(濡れた路面を含めて操縦安定性が高い)、ベースとなるID.2 allは180度転換してフロントモーターを搭載する。

ID.GTI コンセプトのベースとなるID.2 all(写真:Volkswagen)
ID.GTI コンセプトのベースとなるID.2 all(写真:Volkswagen)

「心配されるような技術的問題はないようにするし、駆動系を前にもってくると、ハーネス(配線)などが短くできてコストダウンが図れるメリットもあります」

そう語ってくれたのは、ブランド技術開発担当取締役のカイ・グリューニッツ氏だ。

 「デザインの背景にあるのは、真の意味での『フォルクスワーゲンとは何であるか』という問いかけでした」

またミント氏は、ID.GTIコンセプトをショーにおいてのいわゆる“客寄せパンダ”ではない、とする。

ID.GTI コンセプトのインテリアはレンダリングのみ発表された(筆者撮影)
ID.GTI コンセプトのインテリアはレンダリングのみ発表された(写真=Volkswagen)

「フォルクスワーゲンは、スタビリティ(安定性)、ライカビリティ(好感度)、エキサイトメント(感動)を柱にして、デザイン言語を刷新しています」

その証明ともいえるのが、ミント氏がフォルクスワーゲンのヘッド・オブ・デザインに就任してすぐ、デザインの統括を担当したID.2 allとこのID.GTIコンセプトだ。

「Love Brand:愛されるブランド」であるために

フォルクスワーゲンは、2027年までに11車種の新しいBEVを発売する予定だといい、「遅くとも2033年までにヨーロッパではBEVのみを生産します」(プレスリリース)とする。

技術的、社会的、環境的に、新しい時代に向けて企業がやるべきことは山積みのはず。バッテリーの開発や生産も、技術の進歩が鋭いスピードで進む今、大きな課題だろう。

そこにあって、フォルクスワーゲンは「Love Brand:愛されるブランド」であることを乗用車部門のトーマス・シェーファーCEOは唱える。そこから新世代のフォルクスワーゲンが生まれてくるのだろうか。

IAAモビリティ2023では新型パサートの姿もあった。その他の展示車は記事最後の写真ページにて(筆者撮影)
IAAモビリティ2023では新型パサートの姿もあった。その他の展示車は記事最後の写真ページにて(筆者撮影)

さらに、グループ傘下の各ブランドも、デザインによって需要喚起を狙うという。ID.GTIコンセプトと同じタイミングで、クプラは「ダークレブル」というスポーティーなシューティングブレークコンセプトを発表した。

「ウェイン(クプラのウェイン・グリフィスCEO)には、つねに『私を驚かすデザインを見せてくれ』と言っています。今までどのメーカーもやったことのないデザイン。それがダークレブルです」

クプラのヘッド・オブ・デザインのホルヘ・ディエス氏は、ミント氏と同じステージに立って、にこやかにそう言った。

ここまで大胆に発言するフォルクスワーゲン・グループの各ブランド。「BEVを作っているだけでは2030年代を乗り切れない」という危機感の表れと見ることもできるだろうか。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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