Bさん:「ああ、面白い問題ですね。初見の問題ですが、ニワトリ胚のかなり下のほうを切断しているので、ここには④脳や①心臓②肺、さらに微妙ですが⑦肝臓や⑧胃の内腔などはなさそうですね。これで選択肢10個のうち5個が排除されたので、解答はかなり絞り込めます」
なかなか難しい問題だが、ひるむことはないのだ。Bさんのように、あり得る解、あり得ない解を推理、推測する力が、このような問題を解くうえでいかに重要か、お分かりいただけたと思う。
細かい理論が分からなくても解ける
さてもう1問。AさんBさんの両名に次の図解問題を出題してみた。
この問に対する答えも2人の反応は対照的であった。
Aさん:「アドレナリンは交感神経から出て、心臓の拍動を増加させるのだから、おそらく②のように大きくなるんだろうなあ。いや待てよ、③も大きくなっているなあ。でも、横に寝たような形だからさすがにこれはおかしいよね。ねえ、先生、何かヒントちょうだいよ」
Bさん:「この図は左心室の内圧(圧力)と左心室の容積の関係を表したグラフだから、まずそこを前提に考えないといけない。確かにアドレナリンは心臓の拍動を促進しますが、左心室の容積が②のように倍になったり、③のように内圧が半分で容積が倍になるというのはおかしい。
心臓の拍動を促進するアドレナリンを加えたとしても、左心室が極端に大きく変化することはないと思います。そう考えると、詳しい理論的なことは分かりませんが、おそらく①が妥当なのではないでしょうか」
どうだろう。この2人の反応を見て分かるように、対象となる事物を本質的に観察する力がいかに大切か、よく分かるだろう。受験生に声を大にして言いたいのは、Bさんの思考法を学びなさいということだ。それは物事をよく観察して、自分の頭でよく考えるということである。
言うは易しだが、行うは難しい。こういう思考パターンは子どもの時分から習慣付けられていないと、なかなかどうして簡単にできるものではない。ただ、すでに出来上がった思考力にも磨きをかけることはできる。Aさんのように知識・記憶に偏ったアプローチしかできない思考法でも、トレーニングによりBさんに近付くことはできるのである。
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