「やたらと前職の話をする人」の残念すぎる思考 「易経」から学ぶ"謙虚な気持ち"の大切さ
地山謙は「謙虚さ」のもたらす価値を存分に説いたものです。
謙虚さは、一見すると相手に対して弱い姿勢に見えますが、効果という点では最強だと言えます。謙虚さとは「受け入れる力」です。器量(行為・スキル)などの「陽=押しの力」に対して、傾聴や学ぶ姿勢などは「陰=引きの力」であり、『易経』のなかでは繰り返しその価値が語られています。
しかしながら、いつも弱く出ていさえすれば良いわけではなく、時と場合に応じた対応をする必要があります。
謙虚さが吉なのは、相手に教えを請い、引き立ててもらわざるを得ない下の身分の時や、未熟な状況でヨコの信頼関係づくりが必要な時などです。リーダーや社長など、人の上に立つ立場にあっても、謙虚だとの評判があれば良い状況が生まれる、と『易経』は言います。
別の教え「火水未済(かすいびせい)=未完成で終わる時。反省で終えよ、の意」では、渡河に失敗する小ギツネの話が出てきますが、たとえ未熟でも謙虚であればきっと渡れると励ましています。それほど謙虚さというのは大事で、かつ強力なのです。
中途採用で失敗する「出羽守(でわのかみ)」
「謙虚さが大事」という点では、昨今の企業人事でよく聞く「オンボーディング」でも言えることです。
「オンボーディング」とは、もともと「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」から派生した言葉で、新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して、必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指します。
人事用語としては、企業が新たに採用した人材を職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の流れを受けいれるプロセスのことです。
戦後の高度成長を支えた日本型経営の「新卒採用」は、事業がグローバル化し、「ジョブ型雇用」など欧米型に合わせていく過程で減る傾向にあり、「経験者(キャリア)採用」が急増しています。となれば、早く会社や職場になじんで活躍してほしいわけです。
もちろん、職場に早くなじめるかどうかは「お互い様」なので、会社側、本人側ともに注意を払い、適応するといった努力が必要です。キャリア入社に際して私がよくお話しするのが、「出羽守にならないように気をつける」という点です。
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