「やたらと前職の話をする人」の残念すぎる思考 「易経」から学ぶ"謙虚な気持ち"の大切さ

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「出羽守」とは、大坂夏の陣で「燃える大坂城から命がけで千姫を助けた」伝説の武将、坂崎出羽守直盛(さかざきでわのかみなおもり)にちなんだものと思われますが、意味はまったく違います。

「前の会社では……」「以前の職場では……」など、やたらと前職の話をする人を揶揄した言葉です。

当人に悪気のないことが多いのですが、聞く側には悪い印象を与えてしまうものです。聞く側も仲良くなりたくて相手を持ち上げているわけですが、「持ち上げに乗ってしまうとかえって嫌われる」というのが、日本人の「本音と建前」の難しいところです。

坂崎「出羽守」もこんな話に名を残したとあっては、無念でしょう。せっかくですからその無念にも想いを馳せ、新しい職場では過去はすっぱり忘れましょう。そのほうが謙虚さも認められて信頼もされ、職場になじんで早く活躍できるようになります。

尊敬されるリーダーの、謙虚さの先には…

一方、謙虚さを捨て、むしろ断固とした態度をとるべき時もあります。自らが人の上に立つ立場にあって、その地位を脅かされているために守らねばならない場面です。

たとえば、部下が大事な指示を守らない場合、上司としての厳しさを見せられないようであれば、侮(あなど)られることでしょう。

これはいつの時代でも言え、敵から攻め込まれた場合も同じです。そんな有事に弱腰を見せるようでは、リーダー失格です。誰も安心してついてはいけません。毅然とした態度で攻撃を跳ね返しましょう。

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しかし、あなたの謙虚さが普段から周囲に鳴り響いているのであれば、不安はありません。その姿勢を貫き、裏表のないあなただからこそ、危機に際しての強さはまさに「緩急の妙」で、それがきっと肝心な場面で良いメリハリになり、かえって効果的にもなるのです。

かのアリストテレスは次のように言いました。

「然(しか)るべきことがらについて、然るべき人々に対して、さらにまた然るべき仕方において、然るべき時に、然るべき間だけ怒る人は賞賛される」

このように、人から賞賛され、「この人についていきたい」と尊敬される大人物とは、単に謙虚でいればいい、単に怒ればいい、という単純なものではなく、複雑な状況判断のうえで、深い洞察力をもって、最適な態度がとれる人のことを言うのです。

『易経』でも最高の対応を、「時中(じちゅう)」「時(とき)に中(あ)たる」「中(ちゅう)する」などと表現しています。その時の状況にぴったりと合った適切な行動ができる、という意味です。

●『易経』からの問い●
あなたの考える「謙虚さ」とは、どのようなものでしょうか?
小椋 浩一 易経研究家

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おぐら こういち

1965年、名古屋生まれ。某電機メーカー経営企画部プロジェクト・マネジャー。名古屋大学大学院経営学博士課程前期修了。早稲田大学商学部卒業後、上記電機メーカーに入社。海外赴任を経て会社を「働きがいのある会社ベスト20」に導くが、キャリアの絶頂期に新規事業で大損失を出し居場所を失う。その後『易経』との出会いで人生観が180度変わる。現在では全社横串の次世代リーダー育成の傍ら、社内外でセミナーや講演を多数行っている。

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