岸田総理に教えたい「初任給倍増計画」驚きの全貌 消費力の高い若者にお金を回して経済復活せよ

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政府は政策を総動員し、企業の尻を叩いて、イノベーションによる生産性の向上を促進すべきです。また、この政策では中小企業を主たる対象とするべきです。なぜなら、日本の全企業の99.7%が中小企業で、雇用者の70%が中小企業で働いているからです。

日本の企業は内部留保金を貯め込みまくり、現在その水準は過去最高に達していることも、政府が政策を実行するにあたって考慮しておくべきです。内部留保金を貯め込みまくっているのは、大企業に限った話ではなく、中小企業も同様です。

「企業には賃金を引き上げる余裕はない」と反論されることがありますが、積み上がった内部留保金を見れば、それはまったく事実とは異なる妄想であることは明らかです。政府は決して惑わされてはいけません。

岸田総理は「所得倍増」から「初任給倍増」を

岸田総理は就任時に、「所得倍増論」を掲げました。しかし「労働者全員の給料」をターゲットにしたため、実現性に乏しく、いつしか消え去りました。仮に消費性向が低下する50代以上の賃金を上げても、経済成長につながる効果は小さかったと思います。

しかし、「所得倍増計画」を捨てるのはもったいないです。全体の所得倍増計画を修正して、経済に最もプラス効果が期待できる「初任給倍増計画」を実行していただきたいです。

岸田総理には、「新しい資本主義」の中心に「初任給倍増計画」をすえ、日本経済をふたたび蘇らせてもらうよう、切に期待します。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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