「はぐれ者」北朝鮮とロシア接近に中国はどう動く 混迷に向かう北東アジア、矛盾する中国の戦略

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西側の主要国首脳が集まるG7サミットにロシア大統領が顔を出したのは1991年が最初だった。次第に参加するセッションが増え、1998年からは「G7サミット」ではなく「G8サミット」と呼ばれるようになり、2014年、ロシアがクリミア併合を強行しメンバーから除外されるまで続いた。

つまり、ロシアの外交・安全保障政策にとって最も重要なのは欧米諸国との関係であり、朝鮮半島の優先順位は一貫して低かった。

ただ朝鮮半島が韓国によって統一されることは、ロシアがアメリカの同盟国と直接、国境を接することになり、欧州におけるNATO拡大と同じ意味を持つだけに受け入れられなかった。この点は中国も同じであり、緩衝地域としての北朝鮮の存在が重要であり、半島が南北に分断されている現状の維持が望ましいのだ。

ゆえに中ロ両国とも、地域の緊張を不必要に高める北朝鮮の核・ミサイル実験に反対してきた。

そんなロシア側の思惑を北朝鮮が知らないわけがない。結局、最後に頼りにすべきは朝鮮戦争を共に戦った「血の同盟」である中国だった。

ロ朝の接近、中朝の冷え込み

しかし、こうした伝統的なロ朝関係、中朝関係は2011年に金正恩が総書記に就いたあたりから変化し始めたようだ。

金正恩は父親の金正日が登用していた朝鮮労働党や政府の幹部を次々と更迭した。その極めつきが2013年、金正恩の叔父であり実質的にナンバー2の実力者であった張成沢の処刑だった。張成沢は中国との窓口役となっていたことでも知られており、このあたりから中朝関係にすこしずつ距離が出始めてきたようだ。

翌2014年にプーチン大統領がウクライナのクリミア半島に侵攻し強引に併合したことで、国際社会で孤立したロシアと北朝鮮の接近が始まった。その裏返しで北朝鮮と中国の関係は冷え込み、中国が北朝鮮に対して半年間、原油供給を止めたという話さえ流れた。

そして、2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻した。思うような成果が出せないまま膠着状態が続いている今年9月、金正恩がロシアを訪問しプーチン大統領と会談した。2019年以来の会談だった。

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