財政赤字という病を断ち切るための名案--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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 もちろん、財政審議会がいかによく組織されていたとしても、それ自体で十分というわけではない。おのおのの世代は「私の孫たちは私よりも2倍も3倍も豊かになっているだろうから、彼らに債務を負わせてもさほど問題ではないのでないか」という誘惑に駆られるかもしれない。また政治家は、隠れ債務と長期的な低投資を代償にしてでも、歳出を増やし、目先の経済的繁栄を作り上げようとする。そのため、政治はつねに赤字財政へと傾いていく。

こうした圧力に抵抗するために、財政審議会は定期的にIMF(国際通貨基金)のような国際機関の監査を受ける必要がある。そうすることで、自らの独立性を守り、説明責任を全うすることができるはずだ。

財政政策に関する冒頭のマドフの発言は正鵠を射たものかもしれない。だが、政策の透明性を高め、独立した機関による評価を行うことは、「巨大な財政赤字」という困難な問題を解決するための有益な手段である。革新的なアイデアが、これからきっと生まれてくるだろう。

Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

(週刊東洋経済2011年5月21日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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