【産業天気図・ホテル/旅行】シニア層を軸に回復基調。競争激化の06年が焦点
ホテル・旅行業界は、ようやく本格的な回復軌道に乗りそうだ。日本旅行業協会(JATA)によると、2001年の米国同時多発テロ、03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の反動から、04年度の取扱額は前期比10.4%増。続く05年の4月~9月分は2.5%増。国内は愛知万博が牽引、海外は反日デモの影響はあったものの、それ以上に「これまで我慢していたシニア層の揺り戻しが顕著」(業界関係者)という。鳥インフルエンザの影響が気掛かり材料だが、景気の踊り場脱却も反映して、今下期も堅調に推移しそうだ。
ただ、06年度は「優勝劣敗」が出始める。旅行は最大手JTB<非上場>の動きがひとつのカギを握ろう。06年4月に持ち株会社体制に移行、地域別に分社化し、専門特化を打ち出す。海外旅行ではエイチ・アイ・エス<9603.東証>との争いが熾烈になりそう。また、シニア層向け商品では、メディアや会員誌を利用する阪急交通社<非上場>、クラブツーリズム<非上場>が存在感を示す。さらに、旅慣れた層を狙うユーラシア旅行社<9376.ジャスダック>、60歳以上の熟年リピーター層を顧客に抱えるニッコウトラベル<9373.東証>は強さを発揮しそうだ。国内旅行は、団体旅行、イベント・会議の取り扱いで攻勢をかける近畿日本ツーリスト<9726.東証>の行方が注目点。楽天<4755.ジャスダック>を筆頭とするネット代理店が台頭しており、価格競争力と企画力が試される。
一方、ホテルは外資系ホテルの影響が焦点。客室単価5万円台のコンラッド東京、マンダリンオリエンタル東京が開業。フォーシーズンズホテル椿山荘東京を運営する藤田観光<9722.東証>はスパの増床や、椿山荘と庭園を生かした演出で集客を図るが、「リストラで運営の混乱や顧客離れの影響が残っている」と見る向きもあり、横ばい圏維持で精一杯か。帝国ホテル<9708.東証>は立地条件の良さやブランドで業績は堅調に推移しそう。が、国際興業を介して米国ファンドのサーベラスが筆頭株主であり、波乱含みだ。
【山谷明良記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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