年収1500万「中国人エリート」が処理水を嫌がる訳 「見えない」「身体に悪い」に反応する中国の事情

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

Aさんの能力と996(朝9時から夜9時、週6出勤)を超えた働きぶりが評価され、30代初めに管理職に昇進し、年収1500万円以上となった。大学時代に知り合った同じ町出身の女性と結婚し子供2人に恵まれている。北京の住まいは両家が一生かけて貯めた貯金を頭金と、自分の貯金を頭金として購入した。古いマンションだが、車もあって不自由はない。

貧しい暮らしから大都市で著名な企業で管理職に就き、理想な家族を持つ、まさに現代のチャイナドリームを実現したのだ。だが、筆者は彼と知り合って15年以上となるが、彼は会うたび「僕は、いつも不安だ」と話す。

将来に対する不安が尽きない

中国の社会は競争が異常に激しく、コネがなければ、欲しいものは奪い合いになる。特にIT業界だと、「コスパ」のよい若者が重宝される傾向があるため、30代後半で給料の高い彼は、「いつクビになってもおかしくない」と毎日ドキドキしているという。

その結果、自分のパフォーマンスを維持し、周囲にアピールするために、今でも新人と同じぐらい働き、連日の徹夜もよくあることだ。Aさんの同僚によると、通常6人体制で行う短期的プロジェクトを、Aさんは自らが猛烈に働くことで、2.5人で完成したそうだ。「Aさんは働きすぎだ。すごいと思う。でも我々にはできない。身体も心も持たないよ」と同僚は心配と不安を口にする。

Aさんに「何でここまでするの?」と聞くと、「不安だ。とにかく不安なんだ」といつも返してくる。

「今のマンションは何とか買えたが、住宅ローンの完済まで何十年もかかる。子供たちも大きくなったので、よい学校に近いもっと大きな家を買い替えたい。だが、いつまでこの仕事(給料)でやっていけるかがわからない。妻は一般大学卒だし北京の戸籍がないので働いてもたいした給料しかもらえない。今は専業主婦で私1人の収入で何とかやり繰りしている。

何より、子供の教育は大きな投資だ。子供の教育費用だけはケチってはいけない。私たちは海外に行ったことがないが、子供を海外留学させたい。競争の激しい国内で彼らのいい将来が見えない。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事