高卒渡米元俳優の青年がウォール街で受けた洗礼 「すべて読まない」外資系金融決算書分析の神髄

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私はゴールドマン・サックスでキャリアをスタートさせましたが、そこに至るまでの道のりは決して華々しいものではありませんでした。

俳優を志し単身渡米するも、待っていたのは鳴かず飛ばずの日々。生活のため、知り合いのつてを頼ってニューヨークのヘッジファンドでアルバイトをしていました。

そんな波乱万丈の経歴を持つ私をおもしろがり拾ってくれたのが、ゴールドマン・サックスだったのです。

知りたいのは決算書の背景にある「企業ストーリー」

ほぼ経験ゼロで天下のゴールドマン・サックスに入社した私に最初に立ちふさがった大きな壁が、決算書でした。

先輩・同期は、いわば金融の超エリートたち。みな、スマートに決算書を読み解き、クライアントと話をしています。一方の私は、慣れない決算書を読み続ける仕事がとても苦痛で、時間だけが無駄に過ぎていき、一向に成果を出すことができませんでした。

「なぜ自分にはできないのか?」「才能がないのかも」と落ち込む毎日だったことを覚えています。

そして冴えない数か月が経ったある日、スクリーンに映された決算書をボンヤリと眺めながら「なんのために決算書を見ているのだろう……」と考えていたときに、自分が犯していた間違いに気づきました。

クライアントは決算書に書かれていることを知りたいわけではありません。決算書から何を読み取ることができるのか、ビジネスの特徴、企業の優位性は何かなど、いわば決算書の背景にある企業ストーリーを知りたがっているのです。

それを伝えるためには、決算書をすべて読み通す必要はありません。むしろその真逆で、決算書のエッセンスさえつかんでしまえば良いのです。

それまでは「決算書はしっかり読まなくてはいけない」と思い込んでいました。しかしそれはまったくの勘違いだと気がついたのです。

それ以来、気持ちが楽になり、決算書を読むことへの抵抗が一切なくなりました。決算書を読めるようになるためには会計士並みの知識が必要、と思い込んでしまったことが、決算書をおもしろくない「文字と数字の羅列」にしてしまったのかもしれません。

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