川崎汽船の黒谷研一社長が「戦意喪失」で突如辞任、その背景は…

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川崎汽船の黒谷研一社長が「戦意喪失」で突如辞任、その背景は…

海運大手・川崎汽船の黒谷研一社長が5月12日に突然辞任した。表向きの理由は「一身上の都合」だが、真の理由は黒谷氏の「戦意喪失」。そして「どういう経緯で戦意を喪失されたのかは分かりません」と黒谷氏の前任の前川弘幸会長は言う。

一方、ヘッドハンティングや不祥事、クーデター、前川会長との路線対立、病気による辞任の可能性などを前川会長は会見で全て否定した。特に病気説について前川会長は、「取締役クラスともなると、午後6時を過ぎればいくつかの問題は持っている。体調不良と言ってもその程度のことだと思っている」と一蹴した。

5月13日午後3時から東京・内幸町の川崎汽船本社23階で開催された緊急記者会見の場に黒谷氏の姿はなかった。会見の場にあらかじめ用意されたのは「前川弘幸取締役会長」と「朝倉次郎代表取締役社長」の2つの名札。内容を秘されて集められたにも関わらず、記者団には、開催前からそれが新社長就任会見であることは明白だった。そして、前任の黒谷氏の名札がないのが不自然で異様だった。

黒谷氏は4月28日の前2011年3月期決算を確定する大事な取締役会を「体調不良」を理由に欠席。「実際、風邪を引かれていたのかも知れない」(前川会長)。通常ならば社長自らが説明する複数の決算説明会も、体調不良を理由に、副社長の朝倉次郎氏に説明を任せた。今回の決算発表は新中期計画発表の場でもあり、黒谷氏の欠席はアナリストや記者に「意外」と受け止められた。

その後、黒谷氏はなぜか会社に一向に姿を見せない。ゴールデンウィーク期間中には「黒谷氏が辞意を漏らしている」との情報が前川会長の耳に届くようになり、朝倉副社長は前川会長から「ひょっとしたらこのようなこと(=社長交代)があるかも知れない、と聞いていた」(朝倉副社長)。

5月に入って初めて出社したのが、ゴールデンウィークが明けてすでに4日目になる12日午後のこと。朝倉副社長のほか、前川会長、村上英三専務、吉田圭介専務が参集した場で、前川会長に辞表を提出した。前川氏以外はいずれも代表取締役である。鳥住孝司専務は代表取締役で唯一その場に居合わせなかった。

「一身上の都合」の具体的な中身を黒谷氏本人は会見で明かさなかったが、黒谷氏が見るからに戦意を喪失した様子であったことから、前川会長は「司令官が戦意喪失したのでは戦えない。司令官は戦意を喪失した時点で変わるべき」と慰留をしなかった。他の役員も前川会長にならい、辞任理由を細かく追及しなかった。

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