いまネパールで何が必要とされているのか もうすぐ長い雨季、問題は食糧だけではない

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私が働くシンガポールの人道支援団体Mercy Relief (MR)は、4月25日土曜の地震直後から初動対応を取り、月曜直行便で、現地に一次チーム2名を派遣することを決めた。私もこのチームメンバーに入った。実は、MRがネパールで人道支援を行うのは今回が初めてなので、シンガポールを発つ前に、人道支援を一緒にできそうな地元パートナー団体候補を様々なルートで絞り込み、連絡を取り始めた。

4月27日のカトマンズ行きの便は大幅に遅れ、夕方6時前になってようやく到着した。震災2日後の市内の商店街は暗く、多くの人々が余震で家が倒壊するのを恐れ、歩道や空き地で生活していた。ホテルはその多くが臨時休業だった。従業員が被災し、仕事どころではないのだろう。交渉し、ホテルの駐車場にどうにかテント泊をさせてもらった。

明け方、余震で目が覚めた。28日から、地元パートナー団体候補に当たりはじめた。事前に連絡していた、学生を中心としたボランティアグループは、機動力もあり被災地との強い関係があったので、当日午後に車を仕立て、彼らと一緒にカトマンズから1時間半ほどのカブレパランチョーク郡の被災した山村に向かい、被災状況確認も兼ね、食糧と医薬品を届けた。

「支援物資は政府を通さないで」根強い政府への不信

カトマンズ到着当初は、車両や宿泊先の確保に大変難儀したが、多くのネパール人に助けられた。

彼らが車両や宿泊先を探してくれ、その宿泊先は、車両や支援物資倉庫スペースを快く提供してくれた。MRのカトマンズの体制が揃い始め、支援物資配布も本格的に始まった。

5月12日までに、MRは、地元NGOやロータリークラブ、チベット僧院と協力し、被災状況の厳しい6郡とカトマンズの合計24ヵ所で、2,659世帯に食糧等の物品、1,504世帯に天露を凌ぐ防水シートを配布。途中から、シンガポールからの医療チーム(医師と看護師6名)も加わり、700名ほどの患者に対応した。農村部での移動クリニックでは、チベット僧がシンガポール人医師と被災者の通訳を務めるというネパールならではの協力もあった。

「モバイルクリニック」で、チベット仏教僧が、シンガポールから来た医師と患者の通訳として働いている。ネパールならではの協力だ(MR提供)

私も、食糧物資配給のアセスメントや実施で、被災地を訪れた。住む家と愛する者を失った被災者の何人もの話に心を痛めた。まさに2011年の東日本大震災直後の被災地と重なって見えた。

政府不信の声も聞かれ、支援は政府を通さずに被災者に直接くれもらいたいとの要望も受けた。途中で援助物資が中抜きされてしまうからだということだった。

一方で、ネパール人の「しぶとさ」も垣間見た。この「しぶとさ」は、外部からのサポートが限られる厳しい生活環境の中、世代を継いで生き延びてきた生活の知恵なのだろう。米やトウモロコシ、芋といった主食糧を世帯間で、蓄え、分け合いながら工面する食糧確保がその一例だ。

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