戦時下のキーウで反転攻勢の根源にみる「頑固さ」 現地識者が語る「領土で妥協して停戦はしない」

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キーウ中心部、聖ミハイル黄金ドーム修道院の前の広場には、ロシアから捕獲した兵器が置かれ、親子連れが記念写真を撮る姿が見られた。日本人にとって戦争とはどこか無縁の世界の、倫理的に否定する対象でしかないが、ウクライナ人にとって戦争は、すっかり日常の一部となっている。

キーウ市内に展示されたロシアから捕獲された兵器の前で写真を撮る家族連れ
キーウ市内に展示されたロシアから捕獲した兵器(筆者撮影)

国立歴史博物館を訪れると、展示はほぼ戦争関連のもので占められていたし、市内の至る所に兵士の写真とともに戦意を鼓舞するポスターが掲げられていた。

言論の自由が保障されているウクライナであっても、戦時下のこともあり、本当の感情を話すことをためらわせる雰囲気もあるのだろう。

戦時下の国民感情

国民の意識を知る一つの手がかりは世論調査だが、国営メディアのウクルインフォルムが報じるキーウ国際社会学研究所の世論調査(調査期間2023年5月26日~6月5日)によれば、「ウクライナはどのような状況下でも領土を断念すべきではない」84%、「一定の領土の断念はあり得る」10%となっている。

他方、徴兵逃れが相当程度広がっていることも、報じられている。読売新聞(2023年8月21日付)によると、8月には徴兵逃れに絡む112件の汚職で、徴兵担当者33人が訴追され、国内各地域の徴兵責任者全員が解任された。

国民の大多数が領土奪還を望んでいることは事実だが、肉親や知人の犠牲、国内外での避難生活が続く中、戦争が長期化するにつれて、「戦争疲れ」が広がるとしても不思議ではない。

三好 範英 ジャーナリスト

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みよし・のりひで / Norihide Miyoshi

みよし・のりひで●1959年東京都生まれ。東京大学教養学部卒。1982年読売新聞社入社。バンコク、プノンペン、ベルリン特派員。2022年退社。著書に『ドイツリスク』(2015年山本七平賞特別賞受賞)『メルケルと右傾化するドイツ』『本音化するヨーロッパ』『ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方』など。

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