ソロドゥキー氏はこう語る。
「多様性をつぶすことは、ロシア帝国、ソ連の目標だった。ウクライナ語は禁止された。それはウクライナ人に自分自身のアイデンティティを忘れさせるのが目的だった。ロシアにとってウクライナは頭痛の種だったが、それはウクライナが常に自由を夢見ていたからだ」
ソロドゥキー氏によれば、プーチン氏が主張する西側の「脅威」とは、ロシアの安全保障上と言うよりも、プーチン氏個人の政権喪失の懸念から来るものだ。
安全保障よりも政権喪失の懸念
「かつてプーチン氏は北大西洋条約機構(NATO)に加盟したいと言っていた。NATOにとって受け入れは可能だったが、ロシアは民主主義の価値と基準を満たさねばならない。しかし、プーチン氏が民主主義の価値に服するなどとは考えられない。
今回の戦争はNATOやアメリカとロシアとの間の戦争ではない。プーチン氏は自分の政権を維持したい。レジームチェンジこそ最も恐れていることだ」
ソロドゥキー氏も、プーチン氏はロシア国民の価値を体現している指導者とみる。
「ロシアの指導者が代わったとしても、ロシア人の社会的態度(Social Attitude)は変わらない。ロシアに民主的リーダーはほとんどいない。多数がスターリン時代を誇りに思っていると回答する。民主的ロシアが近い将来、現れることはない」
キーウでは先進7カ国(G7)のある国の在ウクライナ大使にも話を聞いたが、クリミア奪回について、「クリミアは象徴的な意味を持つ。軍事的に奪回することは難しいが、射程が長距離の最新兵器で不安や困難を生じさせれば、いつか、ロシア軍が撤退するという可能性もなくはない」と言う。
この大使も、「ウクライナ人はロシアに対するあらゆる幻想を失った。ウクライナ社会は全面的に戦争を支持している。この状態は続くだろう。ウクライナ人は信じられないくらい頑固な国民」とウクライナの継戦意志は固いという見方を示した。
政権担当者や知的階層のナショナリズムは強く、ロシアに対する不信感は根深い。今後の戦争の展開がどうであれ、この基本的な考え方の枠組みが崩れることはないだろう。
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