日本復活に大事なのは国民の覚悟と産業活力--『日本の突破口』を書いた中島厚志氏(経済産業研究所理事長)に聞く
「20年デフレ」に東日本大震災が加わり、新たな苦難を背負うことになった日本。その復活は、国民の覚悟と産業活力で、と説く。
──現在の日本において大事なのは「覚悟」と「活力」ですか。
増税を受け入れる覚悟だけではない。活力にしても、要は、どういう社会、経済を作っていくのかが問われている。少子高齢化問題をはじめ、方策はわかっているはずだ。覚悟と決意を持って負担し合いながら、目指す社会を作っていきたい。
東日本大震災についていえば、復旧でなくて復興。大きな枠組みで考えよ、というのが歴史の教訓だ。日本経済の下押しを元に戻すだけでは、再び低成長経済に戻るのみだ。しかも結果として財政赤字が増えるだけ、というのではいただけない。併せて、日本全体の活力の、回復というより増進につながる方向にぜひ持っていきたいものだ。
──日本人の絆が強調されています。
今回の大震災で日本人の絆や団結心が注目された。これは社会のあり方についての日本人の思いにつながっている。そうであれば、よりよい社会、経済システムを作るうえで、絆が経済と無縁とはいえない。日本にはイエ社会、ムラ社会といわれるものがあり、家族や地域で助け合ってきた。これ自体は時代とともに内容に変化があるが、それを活用できれば、社会保障の一部の代替に無理のない形でつながる。
日本はどのような社会を作ろうとしているのか、そこではどういう形で覚悟をしていくのか。その国民の覚悟ができれば、いちばんの経済対策になり、かつ打ち出の小づちにもなる。日本人としての今までの生き方を、その覚悟においてうまく踏まえていければ、日本経済は確実に復活する。大震災に見舞われても、いい形で活力を取り戻せ、東北地方の復興も早くできると思っている。