京都や富士山で「観光公害」マナー違反の深刻実態 自然環境保全が困難、世界遺産登録抹消の危機感

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そして、この夏、オーバーツーリズムによる騒動がもっとも注目されたのが富士山だ。山小屋での仮眠を取らずに一気に山頂を目指す弾丸登山や、短パン、Tシャツといった軽装登山を強行する外国人が横行した。その結果、夜道に迷って動けなくなったり、足を捻挫して救助されたりするケースが続出した。登山道で仮眠したり、なかには焚火をした外国人もいたという。

オーバーツーリズムが深刻化すると、その影響は単なる迷惑行為レベルでは済まなくなる。貴重な生態系が破壊されたり、観光資源が損壊したりすることで、観光政策そのものが成りたたなくなってしまう。

自然環境の保全が困難に

富士山がある山梨県の長崎幸太郎知事が8月29日、外国特派員協会で富士山のオーバーツーリズム問題をテーマに講演した。2013年の世界遺産登録時にユネスコから①人の多さ ②環境負荷の大きさ ③人工的景観の多さを指摘され、改善を求められたが、この10年間ほとんど手つかずだとしたうえで、このままでは登録抹消もありうると危機感を示した。

実際、年間500万人の観光客、15万~16万人の登山者が夏の一時期に訪れる状況が続けば、大型観光バスから出る大量の排ガス、観光・登山客のごみ問題などで富士山の自然環境保全が困難になるのは目に見えている。

対策として知事がアピールしたのは持論の「富士山登山鉄道」構想。スバルラインを撤去してそこに環境にやさしいLRTを走らせるというものだ。理念としてはわかるが、実現可能性、時期、資金調達、運営主体など具体的な議論はすべてこれからという状況だ。今年6月の県議会で、構想の事業化対策費として、具体化に向けた官民の役割や整備手法の検討のため6200万円の予算を計上したが、今後の話で、現状の対策にはならない。

会場の外国人記者からは、規制と罰則の強化、入山料1万円徴収、山岳保険加盟義務化、事前の教育講習など具体的な提案があった。これらの対策のほうがはるかに現実的で、それなりの効果も見込めそうだ。法的な問題をクリアしなければならない点もあるだろうが、傾聴に値する提案だといえよう。

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