頑張った自分への「ご褒美」脳にもプラスに働く訳 「報酬系」という脳の神経ネットワークが活性

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「自分へのご褒美」は、報酬系の仕組みを稼働させるスイッチとなります。つねに「ご褒美リスト」を用意しておくことをお勧めします。

・午前中の作業を正午までに終えたら、お昼休憩を長めにとって散歩をする
・仕事相手に「ありがとう」と感謝されたら、好きな映画を観にいく
・先送りしていた重要な仕事に手を付けたら、ご馳走を食べる
・今期の目標を達成したら海外旅行に行く

ご褒美にはさまざまな種類があり、お金や食事のほか、人に感謝されたり、スキルアップが得られたりすることもご褒美になります。これをやったらこれが得られるとわかることで、あなたのやる気は高まるのです。

ご褒美を自分に対してではなく、部下や同僚など他人に渡す場合は、事前に告知せず、サプライズで行うと効果的です。予期せぬうれしい出来事は、脳内にドーパミンを分泌させ、やる気を高めるからです。

ドーパミンが分泌されやすいのは、次の3つの条件下であることが脳神経科学の研究で明らかになっています。

①うれしい出来事を期待しているとき
②予期していなかったうれしい出来事が起きたとき
③うれしい出来事が確実に起きると予想されたとき

サプライズは②に該当するため、ドーパミンが分泌されてやる気が上がるというわけです。

サプライズ効果が薄れた場合は?

皆さんの会社でも、サプライズのイベントが用意されることがあるでしょう。予告せずに誕生日をお祝いしたり、好成績を表彰したり、旅行を企画したり……。

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サプライズがもたらすドーパミンの効果を知らなくても、本能的に喜びが大きくなるのを知っているから、好んで開催されるわけです。

では、こうしたイベントにサプライズの効果がなくなった場合──例えばイベントが定番化して驚きが薄れた場合は、ドーパミンは分泌されなくなるのでしょうか?

答えはノーです。

仲間の喜ぶ姿を見ることで、「次は自分の順番かも」と期待するため、前述した③の「うれしい出来事が確実に起きると予想されたとき」に当てはまり、ドーパミンはしっかり分泌されます。

もしあなたが職場で、チーム運営にかかわるポジションにいる場合は、サプライズのイベントを定期的に開催してみるといいでしょう。驚きや興奮は、チームメンバーのやる気をきっと引き上げてくれるはずです。

田中 伸明 ベスリ会総院長、日本神経学会認定医、医師会認定産業医、東洋医学会専門医

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たなか のぶあき / Nobuaki Tanaka

鹿児島大学医学部卒業後、諏訪中央病院で地域医療に従事。その後、厚生労働省でマネジメントを、マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンで経営を学ぶ。その経験を生かして会津大学理工学部、日本大学工学部、京都産業大学経営学部の教授として大学教育に従事。ビジネス領域で活動した医師免許所有者の社会的責務として、日本を支えるビジネスパーソンのメンタル障害を解決することが重要と考え、ベスリクリニックを開設。医学だけでは解決できない問題に対して独自の社会的アプローチを開発するとともに、ビジネスを含め、広くサービスを探査、提供している。著書に『マッキンゼー×最新脳科学 究極の集中術』など。

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