慶應野球部の教えが「数学嫌い」にも役立つワケ 「フェア」と「楽しむ」姿勢を重視すると伸びる

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チームを率いる森林貴彦監督は著書『Thinking Baseball』で「サイン盗み」に対して次のように述べている。

「罰則を受けないからといって、サイン盗みをしてもかまわないということではありません。これまでバレていなかったり、いまでもバレないままやろうとしているチームはあるかもしれませんが、高校生のときにそんなことをやってきたという思いを持ったまま、大人にしてもいいのでしょうか。卑怯な手を使って勝つ確率を高めようとするのは、その後の人生の考え方に大きな影響を及ぼすはずです。『結局バレなければいい』『うまくやったもの勝ち』という人間を育てることになりかねません。こうした経験を高校生にさせるのは罪深いことだと思います」

ズルをしても「バレなければいい」という考えに異を唱え、正々堂々と勝つための方法を考える慶應高校野球部の指導方法は、数学の学びにも通じるところがある。

筆者は専任・非常勤として10の大学に勤め、文系・理系ほぼ半々ずつ合わせて約1万5000人の大学生に数学の講義を行ってきた。その結論として、答えの当て方だけに頼る学生は限界があるが、答えの導き方、すなわちプロセスを重んじる学生は最後には伸びる、ということである。

最近はプロセスを軽視して「やり方」の暗記だけの教え・学びが目立ち、「裏技を使ってでもマークシート問題は答えさえ当てればよいじゃないか」という一部の世相もあるが、短期的に点数を多少取れたとしても本質的な理解をすることにならない。

やらされるのではなく「楽しむ」

また、森林監督はいろいろな場を通して「高校野球は”やらされ感”が強い。だからこそ慶應は、”野球を楽しむ”」と述べておられる。さらに、選手同士が互いに相談し合って「サイン」を生み出すように、話し合う姿勢を大切にしている。

「好きこそものの上手なれ」と言われるように、数学嫌いな生徒たちにとっても、好きになることが第一歩であろう。桜美林大学リベラルアーツ学群数学専攻での授業でも、同志社大学理工学部数理システム学科での授業(非常勤)でも、優秀な学生さんは皆、学生同士で相談し合って学ぶ姿勢を大切にしている。それ以降、率直に話し合える”友人同士”での話し合いを積極的に取り入れるべきと考えて筆者は実践してきた。

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