子どもをインターナショナルスクールに通わせるほどのおカネがない層も教育熱心なのは変わらない。そうした家庭の子どもはSAPIXなどの中学受験塾を経由して私立中高一貫校を目指す。こうした人々も、住んでいるマンションごとに微信のグループを作って情報交換に余念がない。
中国からの「大脱出」が鮮明になったのは、ここ1〜2年のことだ。中国ではこの現象を「潤(ルン)」と呼んでいる。中国語のローマ字表記であるピンインではRunと書き、そのスペルが英語の「逃げる」と同じであることに由来する。
シンガポールから日本に流れが変化
その動きが最初に明らかになったのは、シンガポールだ。
筆者が初めて「潤」の中国人に会ったのも2022年6月、シンガポールでのことだった。40代男性で、前年の12月に北京から引っ越してきた。中国で暗号通貨関連の仕事をしていたが、国内の規制強化で勤務先の会社そのものがシンガポールに移ってきたのだという。
シンガポール政府は中国人新移民の具体的な流入数を公表していない。しかし前出の男性は「中国人が増えてきているのはシンガポールの企業数の増え方からわかる」と話す。香港を含めた中国からヒトやカネが流入しており、その恩恵を受けるシンガポールの経済は「今後5年は安泰だろう」と予想していた。
シンガポールと中国との関係は安定している。この男性のような、今後も引き続きビジネスでひと稼ぎしたい人、そして中国共産党幹部の親族(いわゆる「紅二代」)らも安心して移ってこられる国となっている。特に目立つのが中国人大富豪の流入だ。
アメリカの『フォーブス』誌が2023年に発表したシンガポール富豪ランキングのトップテンのうち、4人が中国出身者だった。
投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズは6月に公表したリポートで、2023年、中国の富裕層(100万米ドル超の投資可能資産を保有)の国外流出は1万3500人で世界最多となると予想した。シンガポールはこうした富裕層の有力な受け皿になっているとみられ、今年は富裕層3200人を国外から受け入れると予測されている。
こうした超富裕層は、日本でも都心ではなくむしろ軽井沢などのリゾート地に別荘のような形で一軒家を構える傾向が強い。
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