北京在住で日本への移住を考えている20代男性は「中国人富豪が富士山近くで旅館を買い、高級リゾートに改造しているという話を聞きました」と語る。
現役でビジネスをしている中国人富裕層にとっては、上海からほど近い東京は魅力的に映る。何かあったら3時間ほどでひとっ飛びだからだ。時差がほぼないこともプラスになっている。
そこまで富裕とはいえないアッパーミドル層が、中国の大都市から家族連れで日本に移住する動きも増えている。
中国人移住者の事情に詳しい「サポート行政書士法人」主任コンサルタントの王云(おう・うん)氏は、「経営・管理ビザ」(2015年にできた在留資格で、日本での事業に500万円以上を出資することなどが主な条件)や高度人材の枠組みで来日する中国人が増えてきているという。
上海でロックダウンが始まった2022年4月以降、問い合わせが目に見えて増加した。
出入国在留管理庁の統計によると、在日中国人の数は2016年12月から2022年12月にかけて6万5000人以上増えており、在留資格別では高度専門職、経営・管理ビザ、永住者の伸びが目立つ。
技術・人文知識・国際業務や留学のカテゴリーは小幅増にとどまっているので、新移民は以前と比べると仕事の面で「高度」化し、想定している滞在期間も長期化していることがうかがえる。
【2023年8月28日17時05分追記】上記の在留資格別の人数に関する説明について一部修正しました。
「いま中国人がアメリカへ行こうとすると、費用も難易度も高くなります。またシンガポールへの移住コストは上がっているので、日本はいい選択肢だと思っている人が多いのです」と王云氏。日本は手軽な選択なのだ。王氏によると、「上海や北京といった大都市に住む、30代後半〜50歳ぐらいの人がいちばん多いイメージ」だという。
「台湾有事」のリスクも意識
金融資産を保有する中国人にとって一番の関心事は、海外に持ち出した資産をどう保全するかということだ。ロシアによるウクライナ侵攻後、アメリカなどがロシアの富豪に対して資産凍結などの制裁を課したことは記憶に新しい。
「潤」の人々の頭の片隅には、これから起こる可能性のある中国による台湾への武力侵攻、いわゆる「台湾有事」発生のリスクがある。
長年中国のメディアで勤務してきた男性は東京城東部のあるURに妻と一人息子を伴って「潤」してきた。彼も「やがて台湾をめぐって危機が起き、日本も巻き込まれるでしょう。そうすると中国と日米は分断されるはず。私はそうなる前に逃げて来たんです」と語る。
もしものときも日本は資産保全の面で比較的安全なのではという読みがあり、彼自身も今少しずつ資産を日本に動かしている。
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