大阪ミナミ「グリ下」若者支援で直面した深刻事情 家族や性被害の相談を受け、居場所も作る

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グリ下から徒歩数分ほどのビルにあるセンターには、それぞれが思い思いにくつろげるスペースがある。階段状のスペースは、若者が路上でゆるくつながれる場所をイメージして作った。

ユースセンター内部には階段状になったスペースもあり、漫画やぬいぐるみなどが置かれている

キッチンや一緒に食べるテーブルもあるほか、部屋にはラップやヒップホップが流れ、ゲームや楽器、漫画やぬいぐるみも置かれている。若者がSNSサイトに投稿するための動画を制作するスペースもある。ユースセンターは毎週2日間開けている。

一方、こうした若者たちへの行政の支援はいまどうなっているのか?今井さんは「中高生ぐらいだと学校側がケアするが、卒業後に困ったことがあると自分から行政機関に行く必要がある。行政の対応で嫌な経験をしてきている子もいるので、行政に行かず支援につながらない」と問題視する。

スタッフたちが「生活保護の手続きを一緒にしようか」と誘っても、制度を使いたくないと拒否されたりするという。「その壁を乗り超えて、もう一度生活を立て直すのを私たちがサポートしているんです」(今井さん)。

8割が「自分の将来に不安を感じる」

D×Pでは若者たちに向けてLINEを使ったオンライン相談「ユキサキチャット」を行っている。現在の登録者数は1万1000人を超え、スタッフ10人以上で対応に当たっている。

食糧支援については、今年すでに2万9580食を341人に届けた(2023年7月末現在)。発送食数は昨年比で1.9倍となった。こうした経費のほとんどが寄付で賄われているほか、ユースセンターも助成金と寄付で運営されている。運営費用は人件費含めて年間で約6000万円以上かかる。

D×Pが今年、ユキサキチャットの利用者を対象にアンケートを行ったところ(10代から20代の131名が回答)、「自分の将来に不安を感じますか?」の問いに8割弱が「感じる」と回答、「少し感じる」を合わすと9割以上が将来に不安を感じていることがわかった。中でも多かったのが経済面とジェンダーギャップに対する不安だ。

また「日本は自分が努力すれば報われる社会だと思いますか」の問いには「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」で6割以上となった。多くの若者が、生きづらさを感じながら生きている現実が見えてくる。

今後ユースセンターでは営業日を増やしていくつもりだ。「家や学校から逃げてきた彼らが、自分たちで『グリ下』に集まって居場所を作り盛り上げる。その能力は本当にすごいと思う。彼らはこれからいろんな経験をしたら、自分自身が知らないような才能や社会でできることがきっとある。僕らはユースセンターの中で、地域の方も巻き込みながら、これからもサポートしていきたいなと思っています」(今井さん)

夜の街はトラブルと背中合わせだ。「グリ下」を若者のセーフティネットーにしない。そのためにD×Pのような活動を、近隣のみならず行政も一丸となって支えることが必要だ。

鈴木 款 教育アナリスト

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すずき まこと / Makoto Suzuki

1985年早稲田大学政治経済学部・2020年同大学院スポーツ科学研究科卒。農林中央金庫で外国為替ディーラー等担当。NY支店に4年半勤務。1992年フジテレビに入社。営業局、「報道2001」ディレクター、NY 支局長、経済部長を経て現在解説委員。著書に『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉 』『日本のパラリンピックを創った男 中村裕』『日経電子版の読みかた』、編書「2020教育改革のキモ」。教育問題をライフワークに取材。テレビ・ラジオ出演、講演・大学講義や雑誌・ウエブへの寄稿多数。映倫の年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。趣味はマラソン、トライアスロン。2017年にサハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。

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