大阪ミナミ「グリ下」若者支援で直面した深刻事情 家族や性被害の相談を受け、居場所も作る
七夕の際には、集まった若者の間で「イベントをしよう」という話になった。ユースセンターに駐在するスタッフの1人、野津岳史さんはこう語る。
「ふだんセンターは夕方からオープンするが、朝10時ぐらいに皆が集まって、一緒に買い出しに行きました。昼に帰ってきてお米を炊いて、具材を切って。皆で一緒にちらし寿司を食べて、短冊も作りました」
ユースセンターに集まるのは、大阪府内だけでなく兵庫や奈良など府外からも多いという。
「彼らの中には親から暴言や暴力を受け続けたり、虐待されたり、経済的搾取、つまり親に給料をほとんど取られ、家に帰ることができない子がいます。複数でホテル暮らしをしている若者もいます。女性の場合はスタッフが病院に同行すると、妊娠しているケースもあります」(今井さん)
安心して活動できる場所が必要
今井さんは、これまでかかわった若者に食事を作って一緒に食べてきた。彼らはともに食事をしていると「もう一回学校行きたいかも」と言うことがあるという。
「何回か経験したが、こういう空間で一緒に何か作業している時にポツンと『俺、実はこういうことやってみたいんだよね』とか、『私、やっぱ高校卒業したいわ』と言ってくるんです。一般的にユースセンターってわかりづらいが、彼らにとってこれからの未来を一緒に考える場所なのかな」(今井さん)
家でも学校でもない居場所こそが、彼らにとって自分と向き合える場となるのだ。今井さんは、ユースセンターを作った理由をこう語る。
「彼らはいろんな話をしたいし、音楽が好きだったりする。でもテントだけだと個別相談をしたり、一緒に音楽をやったりできない。家に居場所がなかったり精神的な問題を抱えている若者もいるので、一緒にご飯を作って食べたりする家庭的な体験や、自分の趣味ができる文化的な経験、安心して活動できる場所が必要だなと思った。複合的にできる場所は、ヨーロッパにあるようなユースセンターだなと思い作りました」
たとえばスウェーデンでは全土に1500ものユースセンターがあり、子どもや若者たちが集まるという。カフェや食事をつくれるキッチン、映画を観たり運動ができる場所、ステージなど音楽ができる場所もある。
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