60歳定年後の“収入ガタ落ち"を救う3つのお金 社会保険労務士がわかりやすく解説
問題なのは、A子さんの夫がぼやいているように、定年後は給料が減ってしまうこと。
「再雇用になった場合、給料が2~6割減ってしまう会社が多いですね。大企業などでは子会社で役員になることで収入がアップすることもありますが、そういうケースは例外です。多くの場合、大幅に下がります」(岩城さん、以下同)
A子さんの夫は現在58歳。55歳のいわゆる“役職定年”でいったん給料が減り、現在、月36万円になっているという。もしこれが5割減になるとすると、給料は18万円になってしまう。これはつらい……。
「そうした人が少しでも安心して働き続けられるよう、『高年齢雇用継続給付』という制度があり、2種類の給付金が用意されています」
制度を利用し、少なくとも65歳までは働き続けたい
まず、「高年齢雇用継続基本給付金」。定年後もいわゆる失業保険をもらわず会社で働き続け、収入が減って定年前の75%未満になった場合、減額後の給料の最大15%が基本給付金としてプラスされるというものだ。
「A子さんの夫の場合、18万円の15%、2万7000円が支給されます。これを合わせると収入は20万7000円になりますね」
確かに、この2万7000円があるとないとでは大違いかも……。
なお、定年を機に60歳で会社をいったん辞めた場合、失業保険をもらいながら仕事を探すことになる。その後、再就職できた場合、失業保険をもらえる残り日数などが一定条件を満たしていれば、もう1つの「高年齢再就職給付金」がもらえる。金額は失業保険の残り日数しだいだ。
気になる手続きだが、どちらの給付金も、通常は会社がやってくれるので大丈夫。
「実はこういった高年齢雇用継続給付の制度は、今後、縮小されていきます。2025年4月から最大給付率が15%から10%にダウンし、いずれは廃止されると考えられます。
利用できる制度は利用できるうちにしっかり活用して、少なくとも65歳までは働き続けたいところですね」