なぜ日本だけ「統一教会問題」被害が大きいのか 「1970年代半ばから90年代初め」にかけて集中
以上のように統一教会の被害をめぐる歴史を概観すると、1970年代の半ばから1990年代の初めにかけてが、被害の発生と増大のカギとなる時期であることが見えてくる。この時期の統一教会は、日本においてだけは甚だしい人権被害を起こし、多大な被害者を生み出すような活動を継続できたのだ。
日本だけでこれほどの被害が生じた理由
ひるがえって1960年代から1970年代の前半までを見れば、統一教会は日本伝道にだけ力を入れたわけではない。とくに1960年代はアメリカ伝道に多大な力を注いでいた。韓国国内の伝道もヨーロッパ諸国の伝道も重視されていた。この時期は日本が資金提供源として特定されるようなことはなかった。
ただ、1960年代にはアメリカでの政界工作にきわめて大きな比重が置かれていた。そしてその背後には、1961年に成立した韓国の軍事政権があった。ベトナム戦争が進むなかで、反共を掲げる朴正煕の軍事政権とアメリカのニクソン政権との間には深い連携関係があり、日本の自民党政権もそれにからみ、韓米日の連携が強化されていたのだ。
ところが1970年代の半ばまでに、大きく事情が変わる。ベトナム戦争でアメリカが敗色濃厚になる。ウォーターゲート事件でニクソン政権が崩壊する。他方、世界的に「カルト」問題が注目されるようになり、統一教会の政界工作や強引な布教による信徒隔離のあり方が問題にされるようになってくる。
韓国、アメリカやヨーロッパの諸国では、この時期以降、統一教会は人権侵害の及ぶような伝道活動や資金集めはできなくなった。日本だけでそれが可能になり、日本は教祖と教団全体のために資金集めを使命とする国と見なされるようになった。
どうしてそんなことになったのか。『これだけは知っておきたい 統一教会問題』はこの問いへの答えを示そうとしている。こうしたことが二度と起こらないために何が必要か、その問いに答える手がかりも、本書のなかから見えてくるはずだ。
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