なぜ日本だけ「統一教会問題」被害が大きいのか 「1970年代半ばから90年代初め」にかけて集中
『これだけは知っておきたい 統一教会問題』は上記のような問題を取り上げているが、力点は以下の問いにある。
〈統一教会は世界各地に広がっているが、日本以外では大きな被害が生じたことはない。どうしてこのような事態が生じたのか〉
この問いに答えていくには、統一教会の信仰の内実を問い、どのような特徴があるのかを理解する必要がある。また、この宗教団体の急速な拡大の背景となった韓国と日本の宗教史、政治史にも注意を向けておく必要がある。さらに、この時代の韓米日の国際関係についての理解が求められる。1960年代から1990年代までの統一教会の信仰や宗教活動のあり方と、それをめぐる宗教史、政治史、国際関係史について見通しをもつ必要がある。
1970年代から1990年代の統一教会
そもそも日本とそれ以外の地域でこれほど大きな違いが生じたのはいつ頃だろうか。たとえば合同結婚式で多くの女性が韓国の男性と結婚する「韓日祝福」はどうか。7000人とされる日本の若い女性が教祖・教団の意思によって韓国に嫁いでいった。韓国の男性は信仰をもっていないが、配偶者を得ることができないような貧しさやその他の事情をもった人が多かった。それは1984年頃から始まったことだ。
「霊感商法」はどうか。統一教会が巨額の金を市民からむしり取るために、「霊感」を装って弱みをにぎり、途方もない額の費用を求めるようになったのは1977年か1978年のことだ。これを『朝日ジャーナル』が取り上げ、批判したのは1986年から1987年、全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成されたのは1987年のことだ。
多くのマスコミが統一教会の被害や合同結婚式の問題を取り上げたのは1992年であり、ソ連が解体し東西冷戦体制が崩壊した後のことだ。この頃、すでに坂本弁護士一家殺害事件が起こっており、その3年後にはオウム真理教地下鉄サリン事件が起こっている。1990年代の後半になるとすでに霊感商法はおおっぴらにできなくなっている。全国の民事裁判で統一教会に不利な判決が出ていき、2000年代になると刑事事件でも立件されるようになった。
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