日本が調査、ジャワ島鉄道「準高速化」空しい結末 インドネシア政府が白紙化、中国絡む「民活」へ

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筆者はこの準高速化事業に対して当初から疑念を抱いており、2017年11月29日付記事「インドネシア在来線高速化も中国が奪うのか」、同30日付記事「日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点」にて詳報している。両記事共に締めくくりとして日本政府側の態度を批判しているが、結果的に悪い予感は的中した。

事業準備調査の結果、ジャワ北幹線鉄道準高速化事業は以下のとおり事業化の方向性が定められた。

●概要:
 北幹線ジャカルタ―スラバヤ間、約720kmを最高時速160km・5時間半で結ぶ
●方式:
 軌間1067mm・非電化、準高速列車専用の単線高架(バラストレス)を在来線に横付け
●停車駅:
 ジャカルタ(マンガライ)・チカンペック・チルボン・スマラン・スラバヤ(中間駅は建設費圧縮のため2面3線)
●車両:
 電気式気動車6両編成22本(営業時は2編成併結での運転を想定)、インドネシア側が求める国産化率に対応、ローカルコンテンツの活用を検討する
●車両工場・基地:
 重検査用の工場1カ所、および留置及び日常検査の車両基地2カ所
●信号システム:
 高速進行現示対応の多灯式信号の導入、保安装置はATS-P、インドネシア側が求める国産化率に対応、ローカルコンテンツの活用を検討する
●建設計画:
 ジャカルタ―スマラン間を第1期、スマラン―スラバヤ間を第2期とし、第1期完成時にはスマラン以東は在来線に乗り入れ(乗り入れ区間は曲線通過速度の向上を図り、最高速度は時速120kmとする)。また、ジャカルタ近郊区間でも在来線(複々線の列車線)に乗り入れとする
●安全対策:
 在来線乗り入れ区間の踏切を廃止し、交差道路をアンダーパスまたはフライオーバー化

これは、2017年から行われた情報収集・確認調査の中盤でインドネシア政府に打診した内容をほぼそのまま踏襲した格好だ。

インドネシア 北幹線と在来線主要路線図

国家プロジェクトから中国絡む「民活」へ

北幹線鉄道準高速化事業は、この事業準備調査に対するインドネシア側の承認を受けてから政府間契約が結ばれ、コンサルティングサービス(基本設計、詳細設計、入札補助、施工監理等)、電気・信号・通信設備、車両調達へと進むはずだった。土木工事にはインドネシア側の予算で実施されることが検討されていた。だが、円借款事業として次のステップに進むことはなかった。

同事業が国家戦略プロジェクトから外されたということは、円借款はおろか、インドネシア政府予算の投入も事実上、不可能になった。今後、インドネシア側が同プロジェクトを進めるとすれば、ジャカルタ―バンドン高速鉄道のように政府保証を求めない完全な民活プロジェクトとして進めざるをえないということになる。そして、民活での準高速化を進めることがほぼ決定しつつある。

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