日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点 インドネシア案件、調査は日本の担当だが…
インドネシアの首都ジャカルタと第二の都市スラバヤを結ぶジャワ北本線は、日本の円借款プロジェクトにて、架橋修繕・線形改良・路盤改良などが進められ、2014年9月に全線の複線化が完成した。これに合わせ、インドネシア鉄道会社(PT KAI)はCC206型ディーゼル機関車100両を新規発注し、ジャカルタ―スラバヤ間の旅客列車のスピードアップ、そして貨物列車の輸送力増強が図られた。全線複線化の効果は絶大で、基本的に定刻での運行が定着している。ほぼ全区間で100km/hでの高速走行が可能なまでに線路はすでに改良されているのである。
それを今回、さらに高速化改良を行い、最高速度を140km/h~160km/hに引き上げ、ジャカルタ―スラバヤ間を5時間程度で結ばせる。現在、JICA(国際協力機構)によるF/S(フィジビリティ・スタディ:実現可能性)調査が鋭意進行中であり、まもなく中間報告がなされるのではないかと思われる。
住民が勝手に作った踏切が多数存在
その全容はまだつかめないが、現状の線形を考慮すれば140㎞/h程度への速度向上は難しくない。しかし、これまでの議論を見ていると、カーブの多い既存線改良と踏切問題がやたらと主張されているようだ。すでに日本の手により北本線の線形改良は終わっているにもかかわらずだ。
さすがに踏切は、対策待ったなしであるが、住民が作った勝手踏切(PT KAIは黙認している)が多数設置されており、その数は把握されていない。現実的には踏切を撤去するのではなく、線路脇に横断者が出ないようにさくを設置し、歩道橋を架けることになろう。
本来ならば、ここに信号設備の話題も上がらねばならないのだが、どうもインドネシアでは信号保安に対する認識が極めて低いようで、議題に上がっているようには見受けられない。現在、当地鉄道信号は三灯式で、停止・注意・進行の現示しか出せない。少なくとも制限現示や高速進行現示を表示可能にせねばならないのだが、インドネシア側から不要と却下されそうで、笑うに笑えない。
となると、今回ははたして日本の出る幕はあるのか。北本線高速化案が出た時点では、他国の援助は受けず、運輸省予算で対応できるとの試算が出ていた。現在でも、地上設備側の改良だけなら、信号はさておき、資金的にも技術的にもインドネシア側での対応は十分可能である。
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