川崎重工が陥った「インド鉄道ビジネス」の罠 円借款でも安心できない日本メーカーの弱点

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インドの電気機関車。急増する貨物需要に対抗するため貨物専用線の建設が進められている(写真:kouji/PIXTA)

「こんなに高い価格では買えない」――。川崎重工業を中心とした日本連合が提示した価格に対して、インドの国有鉄道会社・インド鉄道が難色を示した。

安倍晋三首相が推進する鉄道インフラ海外展開の中でも、川重は鉄道車両分野で主導的な役割を果たす。最近でもニューヨーク州、ワシントンDC、シンガポールなど世界の各地に川重製の鉄道車両を走らせる。イタリアの車両メーカーを買収して規模を拡大した日立製作所は別格としても、日本車両製造が米国向け車両開発案件でつまずく中、川重は海外展開の勝ち組と見られてきた。その川重が苦戦しているのが、日本が国を挙げて進めているインドの貨物専用鉄道計画である。

日本勢では過去最大の案件

経済成長著しいインドでは、貨物鉄道の輸送能力が限界に近づいている。インドでは旅客列車と貨物列車が同じ線路を使うが、旅客が優先され、貨物輸送が滞りがちなのだ。そこでインド政府は、デリー―ムンバイ間約1500キロメートルとデリー―ハウラー(コルカタ)間約1400キロメートルに貨物専用線を建設、さらに高速貨物車両の導入などによる輸送能力の改善に踏み切った。

2路線のうちデリー―ムンバイ間の建設は日本政府による支援が決定。現在の貨物列車の平均速度は時速20~30キロメートルにすぎないが、電化や信号システムの整備を行ない平均時速100キロメートル程度で走れるようにする。さらに2階建て貨物列車を投入することで、完成すれば輸送力は3~4倍に増強される。総事業費9000億円は円借款で賄われる。日本勢が参加するアジアの鉄道案件では過去最大の規模となる。

双日、三井物産、日立製作所といった日本企業が軌道敷設工事を次々と受注。一部の区間はすでに着工している。問題となったのは貨物専用線を走る9000馬力の電機機関車200両の製造である。40両を日本から輸出、60両をノックダウン方式で製造。残り100両は現地生産という条件で昨年6月に入札が開始された。名乗りを上げたのは川崎重工業を中心とする日本企業連合。円借款の日本タイド(日本企業からの調達が求められる)案件だけに受注は確実と思われていた。

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