鉄道「オールジャパン」のちぐはぐな実態 日本の鉄道は本当に「世界一」なのか?
国土交通省のホームページ上で6月20日に公開されたレポートが鉄道業界で波紋を呼んだ。そのレポートのタイトルは「鉄道産業の抱える課題及び対応の方向性」。内容は我が国の鉄道産業の市場動向を分析し、海外展開を行うに当たっての課題や対応策をまとめたものである。
一読した限りでの印象は、よくある当たり障りのないレポート。「拡大する海外需要を取り込むためには、車両メーカーの生産能力、とりわけ設計能力を充実されることが必要である」「車両の標準化、鉄道業界事業者同士による共同調達の実施等、車両メーカー、鉄道事業者等関係者にとってそれぞれメリットのある車両関連施策を推進することが求められる」。こうした言葉の羅列は、今さら言われるまでもない内容だ。
「役所の幹部が人事異動で交替する際、後任への引き継ぎという意味で現状分析レポートを作成する例はよくある」(霞が関ウォッチャー)。しかし、鉄道業界への取材を重ねていくうちに別の事実が判明した。
「日本タイド」案件が不成立に
事態はおよそ4カ月前に遡る。フィリピンの首都・マニラを走るLRT(軽量路面電車)1号線の延伸計画に際し、30編成120両の車両が2017、2018年の2回に分けて納入されることになっていた。延伸計画は国際協力機構(JICA)の円借款を活用して行なわれ、かつ、資材調達先や工事事業は日本企業に限られる「日本タイド」案件だ。ところが入札が失敗に終わり、2020年の延伸開業が危ぶまれているのだ。
LRT1号線の開業は1984年。乗客の著しい増加に対応するため車両数を増やし、2006年には近畿車輛と日本車輌製造が24両ずつ車両を納入した。車両の引き渡し式には安倍晋三首相が出席し、アロヨ大統領とともに試乗している。それだけにJICAとしても絶対にまとめたい案件であった。
車両製造を担う最右翼とされたのは、前回車両を納入した近畿車輛と日本車輌製造。今回求められているのは新たなスペックの新型車両だが、前回のノウハウを活用すれば開発費を抑えられる。JICAやプロジェクトをまとめた商社には両者のどちらかが受注するはずという読みがあった。
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