南米から「赤い丸ノ内線」が里帰りしたワケ

「地下鉄車両の基礎」を走れる状態で保存へ

深夜にトレーラーで搬送され「里帰り」した旧丸ノ内線車両(撮影:尾形文繋)

かつて東京の地下鉄の象徴だった、真っ赤な車体に「サインウェーブ」と呼ばれる銀色の波模様が入った丸ノ内線の電車。今からちょうど20年前、1996年の夏に最後の車両が引退し、廃車になったうちの多くは南米アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスの地下鉄へ渡った。

時折強い雨の降る7月下旬の深夜、その赤い丸ノ内線の電車が、横浜の大黒ふ頭から都心へ向けて幹線道路を北上していた。目的地はかつての「寝床」である丸ノ内線・中野車両基地。ブエノスアイレスでの役目を終えた車両が、はるばる地球の裏側から約20年ぶりに里帰りを果たしたのだ。

東京メトロ(旧営団地下鉄)はアルゼンチンのほかにも、東西線や千代田線、有楽町線の旧車両をインドネシア・ジャカルタの鉄道に譲渡しているが、いったん海外の鉄道に譲った車両が再び日本に戻ってくるのは今回が初めてだ。

電車の「基礎」を学べる車両

丸ノ内線の赤い電車は、1954年1月の同線開業と同時に登場。最初の「300形」は、現在の通勤電車では当たり前となっている2枚の扉が両側に開くタイプのドアを国内で初めて本格的に採用したほか、制御システムも当時の先端技術をアメリカ・ニューヨークの地下鉄に学んで国産化するなど、その後の日本の電車の基礎となる技術が数多く盛り込まれた画期的な車両だった。今回里帰りした「500形」は、その300形の増備として1957年から製造された車両だ。

「500形は現在の電車とほぼ同等の性能で走ることができ、電子機器が多い現在の電車と比べて構造はシンプル。走る・停まるという電車の基礎を学ぶ教材に適している」。東京メトロ鉄道本部車両部の吉橋健一さんは、「里帰り」の理由として、現在の電車の基礎となった車両としての価値とともに「社員教育の教材に適している」点を挙げる。

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