日本が調査、ジャワ島鉄道「準高速化」空しい結末 インドネシア政府が白紙化、中国絡む「民活」へ
さらに、北幹線の最高速度はインドネシア側の自助努力で2017年以降段階的に引き上げられており、2021年9月には時速120kmに達した。2011年時点で10時間36分かかったスラバヤ―ジャカルタ間の最速達列車の所要時間は、2023年6月には8時間05分にまで短縮されている。また、北幹線は円借款により、複線化、軌道改良が2014年に完成しており、それ以前に比べて2時間半近いスピードアップを実現している。その区間を再び円借款で改良する必要があるのかという視点もある。
そもそも論として、北幹線沿いには中核都市が少なく、既存の在来線のみで十分需要を賄い切れてしまう。準高速鉄道に設置する駅の少なさもそれを物語っている。これで採算ラインに乗せるのはかなり厳しい。2021年になってインドネシア側は電化、標準軌(軌間1435mm)による完全別線方式の北本線準高速化(将来的には高速化)を一時検討し、国産高速車両計画を打ち上げた。ただ、予算や技術的な問題からこの案は立ち消えになった。
需要の少ない北幹線
ジャカルタを発着する長距離列車の行き先を見れば一目瞭然だが、北幹線経由の本数は南幹線に比べて少なく、乗車率も低い。よって、インドネシア側は需要の多い南幹線の高速化を図るべきとしており、これはバンドンからの高速鉄道の延伸によって対応する。
実際、ジャカルタ―バンドン高速鉄道に中国案が採用される以前から、インドネシア側はバンドンから先の延伸についてはいったんチルボンで北幹線と合流した後は同線と離れ、プルウォクルト・ジョグジャカルタ・ソロ・マディウン・ジョンバンと南幹線の中核都市需要を小まめに拾い、スラバヤに至るルートを主張していた(当初の日本提案はチルボンから先は北幹線に並行するルートだった)。
ジャカルタ―バンドン間高速鉄道は近く開業の見込みだが、それに合わせてバンドン以東も着工の機運が高まりつつある。高速鉄道は中国仕様で建設されているため、延伸する場合は引き続き中国式のシステムと車両を採用することが前提となるが、タイド調達を求めない欧州や、国際金融機関などが延伸への参入に関心を持ち始めている。日本は中国案採用の経緯からして、政府としていっさい関わらない方針を貫いているうえ、日本式のシステムを中国仕様の路線につなげるなどといったことは業界が絶対に許さないであろうから、延伸に日本が参入する可能性はゼロに等しい。
いずれにせよ、「フル規格」の高速鉄道がスラバヤに到達するのであれば、わざわざ北幹線までも国家予算で準高速化する必要はないという判断である。
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