「日大会見」林理事長の対応が完全に失敗だった訳 「メディア慣れ」と「非常時の対応」は異なる

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とはいえ、会見では「さすがは林真理子氏」と思った瞬間もあった。それは、会見開始から2時間ほど経った頃だった。

「一番重たい問題だったのは、スポーツの分野だったと皆さまの質問で認識しました」と前置きしたうえで「運動部の分野は沢田副学長に任せていた」こと、さらに「スポーツには遠慮があった。組織、監督、コーチも知らないし、グラウンドに行く機会もない。そちらに手が付けられなかった。もっと積極的に行くべきだった」と吐露したのだ。

会見冒頭から2時間近くにわたって「大学の対応に問題はない」と強弁し続けてきたのだが、事実上の軌道修正だ。記者たちの「納得し難い」という雰囲気を肌で感じとったのだろう。凡庸な登壇者は会見前に決めたシナリオから会見中に外れることはない。だがシナリオの不備を感じ取り、林理事長が即興で軌道修正をしたのは「さすが」というほかない。

悪い意味で忠告を集めた副学長の態度

さて、今回の日大の会見で林理事長と並んで主役に躍り出たのが副学長の沢田康広氏だ。林理事長と比べると無名だったが、今回の会見で一気に注目を集めることになった。注目をその集めた理由は謝罪会見であるにもかかわらず、自信満々、かつ妙に「偉そうな雰囲気」を漂わせていたからだ。

沢田副学長の受け答えを見て、私は「元検事ならではのメディア対応」だと感じた。というのも、検察はメディアに対して、とにかく「偉い」のだ。

マスコミは企業や店舗などへの取材時の自己中心的な振る舞いで、ときにネットでは「マス『ゴ』ミ」と揶揄されることも多い。だが検察取材に際しては、記者はとにかく「礼儀正しい」ものなのだ。

理由はシンプルで、取材先としては「検察の替わり」が存在しないからだ。トヨタのような極めて注目度の高い巨大企業を除けば、メディアにとって、取材対象となる企業や個人、店の替わりは「いくらでもある」。

だが、重要事件の捜査情報は検察「しか」持っていない。検察担当記者は検事に嫌われたら、仕事にならないのだ。その結果、自ずと検察官のメディアに対する振る舞いは「偉そう」になるのだ。

沢田副学長は恐らく検事時代と同様に、メディアの質問に答えたつもりなのだろう。だが、今回はあくまで謝罪会見である。検察時代の流儀ではなく、「謙虚すぎるほど、謙虚な姿勢」であるべきだった。

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