発見から2週間近い間隔が空いたのには、事件隠蔽の狙いがあったのではないか。大麻は2週間、覚醒剤は一定期間で尿検査に反応しなくなるという。検査結果を操作する意図があったのではないか……そう受け止めるのは、自然なことだろう。
こうした隠蔽疑惑について、大学側は会見で「発見時点では違法薬物との確信はなかった。学生へのヒアリングを優先した」と釈明している。だが教育機関である大学が、捜査機関のように聞き取りを長時間かけて行う必要があったのか。むしろ、確信がないからこそすぐに警察に報告すべきではなかったか。8月8日の会見の説明を聞いて得心した記者は、皆無だっただろう。
そして、私が気になったのは、林理事長が会見中に明らかに不機嫌な素振りを何度も見せたことだった。ぶっきらぼうな回答、記者の質問の途中で答えようとするなど、「記者に納得してもらえない」ことへの苛立ちが伝わってきた。
「林理事長は長年、数えきれないほどの取材を受けてきた人物だが、結局『自分を気持ちよくさせてくれるメディア』の取材しか受けてこなかったのだな」。私はそう感じた。
「林真理子」といえば数々のベストセラーを生み出し、直木賞選考委員でもあり、大河ドラマの原作も執筆するなど、日本を代表する人気作家だ。これまで取材を受けてきた出版社系の週刊誌は「日本屈指の人気作家」に最大限の敬意を払ってきただろう。テレビのバラエティ番組や情報番組にしても、同様だ。
今回は「人気作家」として出た訳ではなかった
だが、今回の謝罪会見は「人気作家」に対するものではなく、あくまで「不祥事を繰り返す大学の理事長」として挑むこととなった。メディアの質問の内容や態度が普段とは正反対だったはずだ。それゆえ、ちょっとした追及に苛立つ感情を隠しきれなかったのだろう。
ただ厳しい言い方をすれば、この程度の追及は上場企業の経営者にとっては「日常茶飯事」だ。決算会見、新商品発表会など、上場企業の経営者がメディアの前に立つべき機会は多い。
その際、記者が「太鼓持ち」のような質問をすることはまずない。どんなに好業績、あるいは画期的な新製品であったとしても、「意地の悪い質問」が必ず出るものだ。こうした「難癖のような質問」に対しても、広報の巧みな経営者は余裕の表情でいなしている。たとえ内心は煮えくり返っていたとしても、だ。
こうした「追及慣れ」した上場企業の経営者たちと比べると、今回の林理事長の会見での振る舞いは、あまりにも「ナイーブ」だった。
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